IDC Japanは4月18日、2012年に実施した調査および取材をもとに、国内クライアント仮想化市場のクライアント仮想化 ROI(投資対効果)の算出と分析を行い、その結果を発表した。

調査によると、全社導入と部分導入と試験導入を合わせたクライアント仮想化製品平均のROIは359.0%、投資の回収期間は11.6カ月だった。これはクライアント仮想化製品を使用することにより、投資に対して約3倍以上の効果が得られ、およそ1年弱で投資コストを回収可能なことを意味している。この結果から、前回の調査結果(ROI:325.2%、回収期間:13.3カ月)と比較するとROIの値が向上し、回収期間は短縮されていることが分かったという。

クライアント仮想化製品のROIデータ:導入企業グループ(全社導入+部分導入+試験導) 資料:IDC Japan

「全社導入+部分導入+試験導入」の初期投資額、年次投資額、ベネフィットはそれぞれ1人当たり23万7,773円、4万3,790円、70万5,412円で、エンドユーザーのクライアント仮想化製品の1日当たりの平均使用時間は約3時間(1日8時間勤務と想定した場合)となった。 加えて、クライアント仮想化製品の従業員普及率(クライアント仮想化製品を使用している従業員の割合)は25.7%だった。さらにクライアント仮想化製品の導入によって、エンドユーザー、IT管理者およびITスタッフ、企業全体でそれぞれ36.9%、36.5%、36.3%の効果の改善率が見られた。例えばエンドユーザーでは、平均して36.9%の投資対効果が得られたということを意味している。

全社導入のみ、全社導入+部分導入、全社導入+部分導入+試験導入の3つの導入状況別グループでROIを算出した結果は、それぞれ743.1%、437.7%、359.0%であり、投資回収期間はそれぞれ7.7カ月、9.8カ月、11.6カ月だった。

ROIは全社導入企業で最も大きく、投資回収期間も最も短く、このグループのROIは突出しており、全社導入が投資対効果を向上させると考えられるという。これは試験導入より全社導入+部分導入、さらに全社導入の方が、クライアント環境の管理効率化やエンドユーザーの使用環境向上などで、より高い効果が得られることを意味しているという。

IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの渋谷寛氏は「ITの有用性を計測する定量的指標としてROI(投資対効果)に着目すべきである。クライアント仮想化を含むIT投資は、今後ますます企業経営に密接に連携していく。ITを目先のコストと見るのではなく、リターンを期待できる投資と捉えることが望まれているからである。ITベンダーは、エンドユーザー環境に対する投資対効果を測定した上でクライアント仮想化システムを提案すべきである。その分析結果を経営者と共有することでクライアント仮想化の役割と重要度の理解が進むとIDCではみている」と述べている。