サイレックス・テクノロジー 代表取締役社長の河野剛士氏 |
サイレックス・テクノロジーは4月17日、都内で会見を開き、2013年度の同社の事業方針などを明らかにした。
同社代表取締役社長の河野剛士氏は、「過去3年間を振り返ると、これまでの主力ビジネスであったプリンタメーカー向けプリントサーバの内製化が進んできたことを受け、新たなビジネスの模索を進めてきた期間であった」と語る。同社は2008年のリーマンショックの影響で、2009年には売上高は前年度比で約半分まで落ち込んだことを機に、2010年度から2012年度の3か年計画による「2012年度までの営業黒字化」を掲げ、新たな主力製品となるUSBデバイスサーバ関連製品を核として、組込機器向け無線LANやAVネットワーキング事業といった3つの製品事業を戦略製品として事業の推進を行ってきた。
この結果、これらプリントサーバ以外の製品の売り上げが拡大し、2012年度の売り上げに占めるプリントサーバ以外の比率は78%となった。中でも無線LAN製品の売上比率は45%に達し、見事に黒字転換を達成したという。
こうした背景にはこの数年の間にスマートデバイスが加速度的に普及したことがある。特に日米7社のブロードバンドルータメーカーに同社のUSBデバイスサーバ技術のライセンスが供与されており、2012年度は450万台を突破したほか、組込機器向け無線LANモジュール製品の搭載数も2012年度には50万台を超え、「2013年度はデザインインの獲得が進んでおり、90万台は堅い。一定のマーケットで相応のポジションを獲得したいと思っており、100万台の達成を目指したい」(同)とする。またデジタルサイネージ市場の拡大によるAVネットワーキング市場も拡大しており、それに対応するソリューションの提供も国内を中心に伸長しているが、「まだまだ我々が思っているほど、ワイヤレスソリューションを求めている顧客は多くない。しかし、2012年度に新製品を投入したことを契機に、震災の影響からの回復もあり計画以上の引き合いが来るようになった」とする。
さらに、今後の3年間に向けて同氏は、ワイヤレス製品をさらに増やし、2015年度には売上高の75%を占めるまでに成長させたいとしており、新たな市場分野として産業用途や医療分野、セキュリティ、ロボットといった分野に同社の親会社である村田機械と連携して参入していきたいとする。
特に医療機器については、2011年より先行して事業を進めている米国において10社程度の医療機器メーカーが同社のワイヤレスソリューションを採用することが決定しているとのことで、今後、世界的に市場の拡大が期待されるとするほか、「医療機器の世界トップ12社のうち5社が我々の製品を採用したいと言ってくれている。日本はまだまだで、一部の顧客と研究開発を進めている段階であり、今後、そうした取り組みを強化していくことでさらなる売り上げの拡大を目指す」とする。
そこで同社が掲げるタグラインが「When it Absolutely Must Connect("どうしてもつなげたい")そのときに」であり、「無線LANは家庭内はまだしも、店舗や工場、港湾などの産業用途などではノイズなどの外乱の影響を受けたりしてつながらないことが多い。そうした時に、我々が持てる技術力を提供することで、つながる無線LANを提供することで顧客の課題解決の手助けをしていきたい」とした。
こうした組込機器向け無線LANソリューションビジネスにとして2013年度においては、「デジタルイメージング」「医療」「産業(工業)」の3分野にフォーカスしてビジネスを推し進めていくほか、新たなニーズへの対応に向け「既存製品の強化」、「高速無線LAN対応」、「製品/サービスの強化」、「低消費電力化」の4点を進めていく計画で、既存製品の強化としては、2013年7月に国内初のCCX(Cisco Compatible Extensions)認証を受けたエンタープライズ分野向けセキュリティサプリカントの提供を開始することを明らかにした。
また、高速無線LAN対応としてはIEEE802.11acへの対応を夏から秋にかけてカスタマが評価できる体制を構築することで、本格普及期を迎えるであろう2014年にはカスタマから対応製品が提供されるように体制を整えたいとするほか、無線LANの低消費電力化技術としては、ソフトウェアを中心に開発を進め、現行ソリューション比で1/7へと消費電力の抑制を果たす見込みとする。
さらに、製品/サービスの強化としては、「切れない無線」の実現を目指した独自の「Absolutely Must Connectテクノロジー(AMC)」を進展させ、極力切れないというアプローチを深堀りし、切れた状態でもシステムを安定動作させる手法などを取り入れ、常につながっているという環境の提供を目指すとする。
なお同社では、これらの施策を推し進めることで、無線LAN関連ソリューションの売り上げを2012年度の約9億円から、2015年度には2倍程度へと拡大したいとしている。