TANAKAホールディングスは4月16日、田中貴金属グループの田中電子工業が、2012年12月までのワイヤ出荷量(指数)を材料別でまとめたことを発表した。

ボンディングワイヤ出荷量(指数)の推移

2008年(1~12月)の出荷量を基準にすると、金製と銅製、アルミ製のワイヤ出荷量を合計した総出荷量は、2012年に約17.0%増を記録し、2011年と比べると約11.4%増えた。2010年に過去最高の総出荷量を記録した後、2011年は東日本大震災による影響もあり前年比で約15.3%減少したが、その後は徐々に受注が回復した他、銅製ワイヤの出荷量が急増したことなどが後押しとなり、2012年はプラス成長になったと考えられる。

2012年の銅製ワイヤの出荷量は、これまで過去最高であった2011年に比べて、約89.6%増と大幅に増加した。銅製ワイヤは、金相場が高水準で推移していることを背景に、金製ワイヤからの代替が本格的に進んでおり、主に原材料費削減の観点から、PCやスマートフォンなど汎用機器のICやLSIの配線材として使用され始めている。

銅は金に比べて温度変化や湿度に弱く、酸化しやすいため、品質安定性が低いという問題があったが、田中電子工業では、先端の加工技術を駆使して、要求性能を充分に満たすことができる銅製ワイヤを開発し、販売してきた。こうした技術開発の進展と金の価格高騰が追い風となり、2009年から代替が本格化した銅製ワイヤは、2008年の出荷量を基準とすると、2009年に約5倍、2010年に約8倍、2011年に約13倍と毎年、加速的に出荷量を増やしてきた。2012年には、2008年の出荷量の約24倍にまで増加し、総出荷量を牽引する製品となった。

総出荷量がプラス成長に回復したもう1つの理由として、金製ワイヤの高い需要が挙げられる。2012年の金製ワイヤの出荷量は、前年比で約3.3%増えた。2009年以降、金製ワイヤから銅製ワイヤへの素材代替が進んでいるが、金は耐食性や導電性などに優れた化学的特性を持っていることから、金製ワイヤは依然として高い需要を保っており、ワイヤの主力プレーヤーとして総出荷量を牽引している。特に、金製ワイヤは、車載電子機器や産業用機器といった高い信頼性が求められる機器の半導体配線を中心に、幅広い用途で必要とされており、今後も高い需要を維持すると考えられる。

また、2012年のアルミ製ワイヤの出荷量は前年比で約17.0%減少したが、ここ数年は一定の範囲で出荷量が推移している。現在、アルミ製ワイヤは、主にパワーデバイスなど大電流通電用の半導体配線材として使われているが、今後、次世代パワーデバイスにおける半導体配線材としての市場が拡大すれば、出荷量は増加すると見られる。

田中電子工業が製造するボンディングワイヤ