日立製作所は4月15日、永久磁石モーター(ブラシレスDCモーター)の駆動に必要となる位置センサを用いず、停止・低速状態から素早くモーターを起動させ、高いトルクで駆動できる制御技術を開発したことを発表した。
近年、省エネの観点などから、モーターの高効率化への要求が高まっている。中でも永久磁石モーターは、交流モーターとして一般的な誘導モーターに比べ効率が高いことから注目を集めつつある、しかし、永久磁石モーターは、停止・低速状態から素早くモーターを起動させるためには、回転子の位置角を検出するための位置センサが必要であり、このセンサの取り付け場所や取り付け精度、信頼性などが課題となっていた。
センサを用いずに高精度で制御することができれば、コストの削減や小型化、メンテナンスの容易化などが可能となることから各所にて技術開発が進められているが、現在、実用化されているセンサを用いない制御技術は、低速回転時に十分なトルクが出にくいという課題があるため、エアコンや冷蔵庫、産業分野のファンやポンプなど一部の用途に限られている。また、モーターの起動時には、トルクを出すために電流を多く流す必要があり、無駄なエネルギーを消費していることも課題となっていた。
今回、同社では永久磁石モーターが、回転子に取り付けられた永久磁石と巻線に流れる電流によって回転トルクを得ている点に着目し、巻線のインダクタンスが微小に変化することを利用して、回転子の位置検出を行うことで、停止状態から回転子の位置を検出することで、位置センサを用いずに、停止・低速状態からすばやくモーターを起動させ、高いトルクで駆動できる永久磁石モーターの制御技術を開発することに成功した。巻線のインダクタンスの変化は、モーターの起電圧の変化として観測できるため、その起電圧の値から逆算して回転子の位置検出を実現しているという。
同社では今回開発した技術により、永久磁石モーターの位置センサを不要にすることができるため、モーターの小型化や据付・メンテナンス作業の簡略化を図れるほか、低速状態から短時間で高いトルクを出せることから、コンベアや昇降機などへの応用も可能となるため、永久磁石モーターの用途拡大が可能となると説明している。
また、同技術は巻線のインダクタンスの微小変化をもとに回転子の位置を検出するため、モーターの構造や磁石の材料などに関らず、さまざまな永久磁石モーターに適用できるため、レアアースを用いないアキシャルギャップ・アモルファスモーターなどでも適用可能だとのことで、同社では今後、産業用を中心にさまざまな永久磁石モーターへの適用に向けて、開発を進めていく計画としている。