長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の新竜一郎 准教授らと徳島文理大学の研究グループは、プリオン病の病態に深く関与しているプリオンたんぱくが運動技術学習において重要な機能を果たしていることを明らかにしたと発表した。

今回、研究グループは正常なマウスと遺プリオンたんぱく遺伝子破壊マウスに小脳依存的な「瞬目反射条件付け」を実施し、反応の違いを比較した。同条件付けは、古典的条件付けの一種で、音を聞かせた後にまぶたに電気刺激を与えるということを繰り返すと、音を聞いただけでまぶたを閉じるようになるという現象(連合学習)のこと。この連合学習の獲得および維持には小脳-脳幹が必須であり、またマウスからヒトまで種を越えた共通性を示すことがわかっていることから、マウスによる結果とヒトの関連性を示すことが期待される。

比較の結果、正常なマウスでは約7割の個体が音を聞いただけでまぶたを閉じるようになったが、プリオンたんぱく遺伝子破壊マウスでは、その3割程度しか反応を示さないことが判明した。

瞬目反射条件付けは運動技術の学習と関連が強いと言われているため、今回の成果から哺乳類の神経系、とくに小脳に高いレベルで発現している正常型プリオンたんぱくは、運動技術学習において重要な役割を持っている可能性が高いことが示されたと研究グループでは説明している。