ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)に積極的に取り組まれている企業の担当者に、現場でのSMM活動の実際についてお聞きするインタビューシリーズ【企業担当者に聞くSMM最前線】

こんにちは、SMM Labの藤田です。

今回は、Facebookページを通じて醸成した製品理解を、商機につなげていらっしゃる株式会社井田両国堂の安部 明日夏氏にお話を聞きました。前半は、Facebookページ立ち上げまでの経緯と徐々に現れはじめた効果についてお伺いしましたが、後半は具体的な投稿の工夫や展開中の新しい取り組みについてお聞きします。

前半記事: 【企業担当者に聞くSMM最前線】株式会社井田両国堂 安部 明日夏氏
~ライフスタイル提案型Facebookページで製品理解を商機に(1/2)
http://news.mynavi.jp/news/2013/04/12/133/index.html

株式会社井田両国堂 TMD特販部 安部明日夏氏

――安部さんとお話していると本当にコスメが好きなんだなぁというのが伝わってきます。その想いがファンの共感を集めているのでしょうね。投稿を拝見していると、とても自然体で安部さん自身がファンとのコミュニケーションを楽しんでいらっしゃるのがわかります。

初めから今のスタイルだったわけではないんですよ。Facebookページのファンが増えていくうちに「誰々さんがいいねってしてくれている。またこの人だ!」という感じでだんだんファンの顔を覚えていって、イメージする人が増えていく。近く感じてきて、嬉しくなる。そういう繰り返しの中で、今ファンの人は何が知りたいのかな?とか、どんな投稿なら反応してくれるのかな?と考え続けていました。

個人でFacebookを使っている時と一緒で、桜が綺麗だったらシェアしたいと思うし、美味しい料理が出来たらレシピを教えたい。せっかくFacebookというリアルタイムのメディアを使っているのだから、やはり毎日の生活を共有していったほうがいいと感じはじめて、ファンが見てくれそうな時間を意識したり、タイムリーな話題を考えたりするようにしたら、ファンからの反応が良くなり始めました。

「チョモットボーテ(Chomotto Beaute)」Facebookページ
https://www.facebook.com/C.BEAUTE.official

――なるほど、ファンの反応を見ながら投稿を工夫していったんですね。「ファンを身近に感じる」ようになったきっかけがあったのですか?

Facebookページのファンの方が投稿をみて、カスタマーサポートに電話をくださったんです。メイクブラシについてのお問い合わせだったので開発担当者が対応したのですが、その対応が良かったとFacebookページにコメントを下さって、それから頻繁にコメントを書き込んでくださるようになりました。その方のコメントのお陰で自分のモチベーションも上がりましたし、ページ全体の温度感も上がったと思います。

――コアなファンがページを盛り上げてくれるようになったわけですね!

その方のお陰でコメントを書き込んでくださる方も増えましたし、回りで見ているだけのファンの方の雰囲気も変わってきたのを感じましたね。全員が積極的にコメントを書き込んでくださるわけではないですが、ちゃんと見てくださっているというのが伝わってくるようになりました。

今は、皆さんに日常の中のハッピーを提案していこうと思って投稿しているけれど、結果として自分がファンからハッピーをもらっているという感じ。Facebookページの投稿をすることで自分の生活も充実しはじめて、だんだん生活の一部になってきています。だから自然と、今日は新しい商品が出たから使ってみようとか、お休みの日はメイクの研究をして発表してみたりとか、自分自身の体験を共有する投稿が増えていったという感じですね。

――確かに、投稿のスタイルが変化しているのがわかります。画像にしても、最初の頃は商品だけが写っている写真が多かったですが、途中から商品を使っている安部さんの写真が増えていますね。

そもそも、メイクブラシの使い方を投稿しようと思ったのは、買ったばかりのメイクブラシがすぐにダメになってしまったというご意見をいただいたことがあったからなんです。でもそれは、製品の不良ではなく、お客様が正しい使い方やお手入れの方法をご存じなかったためでした。メイクブラシって正しい使い方じゃないと仕上がりにも差が出てくるし、お手入れの方法が間違っているとすぐにダメになってしまう。逆に、正しく使ってキチンとお手入れをすると、長くお使いいただける品物なんです。だから、正しい使い方やお手入れ方法を伝えたいと思った。でも文章をいくら工夫しても「これじゃ伝わらない」と思い、やっぱり自分が実際に使っている場面を見せていかなくては説得力がないと、製品を使用している顔出し画像の投稿を始めたんです。伝えたいがゆえの苦肉の策でしたが、このブラシはこう使うとこう仕上がるというのを、自分の顔を出して見せるようにしてから、以前よりもずっと伝わっている気がしています。たとえば、シャドウ大というブラシの使い道がわからなかったとおっしゃる方から、「Facebookページの投稿で使い方を教えてくれたので手放せなくなりました」というコメントいただいた時は嬉しかったですね。

――ファンも安部さんという「人」が身近に感じられるようになってきたんですね。Facebookページが「メイク好き」の方たちのコミュニティに成長し始めているようにお見受けします。そんな中で、ファンの方たちと一緒に商品開発を始められていますが、この取り組みは何がきっかけだったのですか?

ある雨の日にメイクボックスを整理していまして、綺麗になったのでFacebookページに写真をアップしたところ、「そのメイクブラシを立てているボックス、いいですね」っていうコメントをいただいたんです。その「メイクブラシ立て」はその時点では廃盤になっていた商品だったのですが、興味がある方がいらっしゃるということがわかったので、もしかしたら他にもあったらいいなと思っている方がいるだろうかと思い、反応を確かめる投稿をしてみたところ、想像以上の反応をいただきました。その話をメイクブラシの担当者にしたところ、欲しいとおっしゃってくださる方がいるなら、商品として作ってみようということになり、せっかく作るなら欲しいといってくださっているファンの声を聞いて、みんながハッピーになるものを作りたいと、今回の企画をスタートしました。

ファンとの共創企画のきっかけになったチョモットボーテFacebookページの投稿

一番最初は「メイクブラシ立てを作ろうと思いますが何色がいいと思いますか?」と聞いてみたのですが、夕方に投稿したところ次々にコメントが集まってきました。「メイクブラシ立て」という、ある意味すごくマニアックな物に関する話題に、コメントをいただける事自体がすごくうれしくて、全部にすぐにお返事したいと返信していくうちにドンドン盛り上がっていって、夜中には女子会じゃないかと思うぐらいの状態になりました(笑)

それから価格についても聞いてみたのですが、意外と安ければいいというものではないということがわかりました。この価格なら納得して買える、買ったことが嬉しいと思える、使ってみて買ってよかったと思える。そんな適正価格というものがファンの皆さんの中にあるという気付きになりました。

――消費者と価格の話を直接するというのは今までないことですね。ファンの方と一緒に商品開発をするという取り組みで難しいと感じたことはありますか?

様々なご意見をいただくので、中には大多数と相容れない意見の方もいる。全部一度には対応出来ないことが苦しいですね。でも、まずは多数派のご意見に対応することから始めて、その次その次と徐々に対応していけたらいいなと思います。

――Facebookページ開設から半年が経ちましたが、振り返ってみていかがですか?

Facebookページ開設以前は、ネット通販ではお客様の顔が見えていなかったと思うんです。だからお客様にとって何がECサイトとしての良い接客なのかがはっきり分からず、対応の難しさを感じることがありました。それが、Facebookページでは顔が見えるので、直接接客している感覚になれたのが個人的に大きかったですね。実際に買われている方は少ないのかもしれないけれど、こういう方達が自社に興味を持ってくださっているのだと見えただけでも大きな違い。お客様が見える化したことが、私自身のFacebookページに対するモチベーションに繋がって、接客=投稿にグッと気持ちが入るようになりました。そのためECサイトでも、顔を思い浮かべるような対応ができるようになったと思います。パソコンの先にいらっしゃる「お客様」への想いが強くなり、感謝の気持ちがより強くなりました。

チョモットボーテ オリジナルメイクブラシとFacebookページのファンと一緒に作ったブラシ立て

――今回Facebookページのファンとお作りになった「メイクブラシ立て」も完成されて、近日中に発売されるとのことですが、今後もこうしたファンとの共創企画は続けて行くご予定ですか?また、今後チョモットボーテのFacebookページがどのような姿を目指すのか、目標があったら教えて下さい。

そうですね、今回「メイクブラシ立て」という実績が出来たので、今後もファンと一緒にオリジナル商品を作っていく取り組みは継続して行きたいと思っています。Facebookページにせっかく「コスメ好き」の方に集まっていただいているのですから、ファンの方が心から欲しいと思えるものを一緒に作っていけたらいいですね。自分が好きな「コスメ」という世界で、こんなものがあったらいいなと思う商品の開発に関わったり、意見が反映されたら嬉しいんじゃないかと思うんです、私自身がそうなので。だからチョモットボーテに関わってるとなんか楽しくて嬉しいことがあると思ってほしいですね。

<インタビュー後記>

ファンに愛着を持ってもらうにはまず担当者がファンに愛着を感じる、担当者自身が楽しみながら運用する、ファンに自分自身を重ねる… こうした運用を自然体で成功させているように見える安部さんですが、実は徹底的にファンについて考え、求められているものを追求し、こまめなPDCAを実行する、地道な努力をされていることが今回のお話の中から分かりました。今後はコスメの魅力や正しいスキンケアの方法を、女性だけでなく男性にも伝えていくために、新しいFacebookページでのチャレンジも考えているそうですので、こちらの活動も楽しみです。
(SMMLab 藤田)

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