東北大学は、ゴマに含まれる健康促進成分「セサミノール」の工業的生産を実現する可能性を持つ新しい酵素を発見したと発表した。
同成果は同大大学院工学研究科バイオ工学専攻応用生命化学講座の中山亨 教授、宮崎県の清本鐵工、南九州大学の山口雅篤教授らによるもので、詳細は4月10日発行の米国科学誌「PLOS ONE」に発表された。
近年の研究からゴマやゴマ油などのゴマ関連食品を摂取すると、健康に好ましいさまざまな効果があることが判明してきた。中でもゴマに含まれるリグナンの一種である「セサミン」の健康促進効果については理解が進み、健康食品の成分として市場開拓が進んでいるほか、同じく健康促進成分として有望な「リグナン」の活用も期待されるようになってきている。セサミノールはこうしたリグナンの1種で、これまでの研究から、強力な抗酸化活性、抗動脈硬化作用、抗がん作用などが明らかにされてきた。
セサミノールはゴマ種子中では、セサミノールに3つの糖(糖鎖)が結合したセサミノールトリグルコシド(STG)として含まれているが、糖が結合したSTGの形では有用な活性は発揮されないため、ゴマをそのまま摂取しても、ヒトの体内でほとんど分解されることなく排出されてしまうと考えられている。また、ゴマ油の製造の過程で排出される搾りかすの中にも豊富に含まれていることが知られており、セサミノールの安価な原料として期待されているが、付加価値の低い飼料や肥料としてしか利用されていないという課題があった。
今回、研究グループは、STGを分解してセサミノールを効率よく生成できる微生物の探索を実施したところ、ゴマ搾りかす中にそうした能力を持った微生物がいることを発見。この微生物のSTG分解酵素(PSTG)「β-グルコシダーゼ」は、単独でSTGを効率よく分解することができることから、同酵素を微生物の細胞抽出液から精製し、酵素遺伝子も取得し、組換え型酵素も調製し、その性質を調査したところ、PSTGはほかの多くのβ-グルコシダーゼが好んで切断するβ-1、4-グルコシド結合やβ-1、6-グルコシド結合よりも、一般には分解されにくいβ-1、2-グルコシド結合をより好んで切断するというユニークな特異性をもっていることが判明した。
STGの糖鎖構造にはβ-1、2-グルコシド結合とβ-1、6-グルコシド結合の両方が含まれているため、PSTGがSTGを例外的に効率よく分解できる能力の一部であると説明できると研究グループでは説明しており、これを活用することで、安価な未利用資源から付加価値の高いセサミノールを工業的に生産するための突破口が開かれる可能性がでてきたとしている。