ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)に積極的に取り組まれている企業の担当者に、現場でのSMM活動の実際についてお聞きするインタビューシリーズ【企業担当者に聞くSMM最前線】

こんにちは、SMM Labの藤田です。

今回は、Facebookページを通じて醸成した製品理解を商機につなげていらっしゃる株式会社井田両国堂の安部 明日夏氏にお話を聞きました。

安部 明日夏氏
株式会社井田両国堂 TMD特販部

――まず最初に、安部さんが運営されているFacebookページ「チョモットボーテ(Chomotto Beaute)」の概要と開設の目的を教えて下さい。

化粧品・化粧雑貨の卸商社・輸入総代理店「株式会社井田両国堂」が運営するコスメ通販ECサイト「チョモットボーテ(Chomotto Beaute)」の公式Facebookページとして、2012年10月に開設しました。目的は「チョモットボーテ(Chomotto Beaute)」ECサイトへのトラフィック流入増加、売上向上、新規顧客開拓という感じですね。

――それまではどのようなマーケティング施策を行なっていらっしゃったのですか?

SEOとリスティングだけでしたが、近年その効率が徐々に低下していたことから、新しい可能性を求めてFacebookページ開設に取組むことにしました。

――SEOとリスティング以外だと他にも色々と選択肢はあったと思いますが、なぜFacebookを選ばれたのですか?

実名制で信頼性が高かったことと、スモールスタートがしやすそうだったからです。

――Facebookページ立ち上げまではスムーズに進みましたか?

実名制とはいえネガティブな書き込みをされたらどうするかなど、社内では懸念の声もありましたが、色々な企業のFacebookページを見てみても、心配になるようなネガティブなコメントは見当たらなかったんです。それで、“ファン”というのは「いいね!」というポジティブな感情で集まってきてくれる人なのだから、まずは信じてやってみようということになりました。

ただ、コミュニケーションを始めるからには続けなくてはいけない。利用規約から始まり、投稿の内容・頻度、コメントの返し方など、継続的に運用するための準備には念を入れました。でも結局は、ファンの方々に継続的な“提案”がし続けられるか?それが自分に出来るのかという覚悟の方が問題でしたね。

そこで、ページ立ち上げの準備として個人でもFacebookをやってみたんですが、何気ない会話の中でも人柄や人間性が見えてしまうということが分かったので、だったら公式ページもお客様とコスメ好き同士としてつながって、個人でFacebookを使っているのと近い感覚でやっていこうと覚悟を決めました。元々ECサイトの商品セレクトも担当していますし、お客様も同世代の方が多いため、自分も自社のターゲットの一人という感覚があったので、自分自身に近い人に向けて「等身大」を伝えていこうと思ったんです。

チョモットボーテ公式Facebookページ
https://www.facebook.com/C.BEAUTE.official

――運用のスタートは順調でしたか?

想像以上に順調だったと思います。最初はFacebook広告で「コスメが好き」という女性ファンを集め、どんな投稿に反応があるのかを見ながら、何が求められているかを研究しました。その中で、「メイクブラシ」に興味を持ってもらえそうなことがわかってきました。

なでしこジャパンが国民栄誉賞を受賞した際に、熊野のメイクブラシが記念品で送られたことが話題になって以来、メイクブラシ自体の注目は高まっていましたが、実際にどのくらいの方に興味を持ってもらえているかは分かっていませんでした。それが、Facebookページの投稿でブラシを使ったメイク方法を提案していくうちに、興味を持ってくれる人が増えているという感覚を感じるようになりました。

――そこで「メイクブラシ」をプレゼントにしたキャンペーンを開催されたのですね。

「メイクブラシ」は弊社がオリジナルとして製品展開している注力商品ですので、この上質なブラシを知っていただきたい、実際に使ってみていただきたいと思い、プレゼントキャンペーンを開催しました。はじめはメイクブラシを欲しいと思ってくださる方がどのくらいいるのか不安でしたが、結果的には5,000人以上の方にご参加頂くことが出来ました。

――キャンペーンの効果はいかがでしたか?

キャンペーンを紹介する投稿に「使ったことがないから使ってみたい」というコメントをいただくなど、メイクブラシへの関心度を上げることが出来たと感じています。キャンペーン後はFacebookページのファンが大幅に増え、影響力も上がっていると感じられるようになりました。直接的な効果かどうかははっきりとはわかりませんが、実店舗でメイクブラシの売上が上がっているという話を聞くようにもなりました。

――Facebookページが売上にも影響し始めた感じですか?

そうですね。はっきりとはわかりませんが、外国のお客様から日本に行くので商品がどこで買えるのか教えてほしいという問い合わせが来たり、店舗で明らかにメイクブラシを目的に来店された感じのお客様もお見かけするそうで、Facebookページで知っていただいたのではと思うことが増えてきていて、ジワジワ影響が出始めているという感じです。

――一番の目的であるECサイトへの影響はいかがですか?

Facebookページの投稿では実際に私が愛用しているブラシを紹介しているのですが、普段はあまり動かない商品が投稿の後に売れていたということがありました。そこでクリスマスに向けてギフト商品を積極的にご紹介したところ、それまで月に3,4件だったコンバージョンが、Facebook経由で98件以上になりました。また、サイトへの流入元をアナリティクスで見てみると、Facebookページ関連のキーワードでの検索が増えており、サイト全体のCVRもリスティング施策のみの時期に比べて2倍程度まで伸びてきています。Facebook経由のコンバージョン効率が良いというのは、相当な興味を持ってサイトに来てくれているからだということではないでしょうか。

高単価なギフトやブラシのご購入が増えたり、『どう使ったらいいか分からないから買わなかった』というような方が買ってくださるようになったのは、ECサイトだけでは伝えることが出来なかった製品の魅力を、Facebookページで表現できたからではないかと思います。

――Facebookページでは自社製品以外の商品もご紹介されていますね。

弊社は卸や輸入も手がけていますので、お取引先の商品もご紹介しています。ただ、お取引先の商品であっても自分で使ってみた実感でお気に入りとしてご紹介しているので、そういう気持ちがファンにも伝わっているのではないでしょうか。反応が良いので、メーカーさまにも喜んでいただけていると思います。最近は商談でFacebookベージの話をすると、紹介して欲しいという言われることも増えて来たので、今後はお取引先のメイクアップ商品と弊社のブラシでコラボするような企画もしてみたいと思っています。

――ECサイトや実店舗などビジネスの現場にもFacebookページの好影響が出てきているということでしょうか。

確かに徐々に売上にもつながってきているとは思いますが、それよりも今まで見えていなかったお客様の顔が見えるようになったことが、Facebookページを始めて一番良かったことですね。今はファンの方が「いいね!」やコメントをしてくれるのが嬉しくて仕方ないんです。ファンの皆さんの反応が私のモチベーションになっていて、皆さんがもっとハッピーになれる提案をして行きたいと思っています。私自身、メイクが上手く仕上がるとテンションがあがるタイプなので、その感覚を伝えて行きたい。「女子に生まれてよかった!」と思えるような、「メイク」のあるライフスタイルの提案が出来るFacebookページにしたいんです。そして、このFacebookページを、消費者の声をアンテナのようにとらえて社内やお取引先に届けることが出来る、そんな存在にしたいと思っています。

<後半へ続く>

前半は、Facebookページ立ち上げまでの経緯と徐々に現れはじめた効果についてお伺いしました。後半は、売り上げに繋がっている具体的なFacebookページ投稿の工夫やファンと取り組んでいる共創企画についてお聞きします。後半も、お楽しみに!

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