日本オラクル 代表執行役社長 最高経営責任者 遠藤隆雄氏

4月9日、日本オラクルはグランドハイアット東京において「Oracle CloudWorld Tokyo」を開催。これは、Oracle Cloudの最新情報をはじめとするクラウドに関する情報を、業種ごとに分類した31のセッションで紹介するイベントだ。

オープニングでは、同社代表執行役社長 最高経営責任者である遠藤隆雄氏が登壇。「登録いただいたお客様数は4,900名、過去の1デイセミナーとして開催した日本オラクルのイベントとしては過去最大規模」と盛況ぶりを語った。遠藤氏はクラウドに関連する多様なキーワードとそのつながりを紹介した。

クラウドを軸につながる各種キーワード

続いての基調講演では、米OracleのCEOであるラリー・エリソン氏がサンフランシスコからのライブ中継で登壇した。世界10カ所で開催される「Oracle CloudWorld」だが、ラリー・エリソン氏が登場するのは日本だけだという。

ライブ中継で登壇したOracle CEO ラリー・エリソン氏

同氏は、クラウドによって、アプリケーションやデータベース&ミドルウェア、インフラストラクチャといったものが全てグローバルネットワークを介したサービスとして利用可能になり、ユーザーからはソフトウェアやサーバといったものの複雑さが見えなくなる。ブラウザを介してサービスを手軽に使えるようになり、複雑さから解放されるからだ。ハードウェアやソフトウェアへの投資はサービスプロバイダが負担し、ユーザーは利用した分だけの月額料金を支払えばよくなる。システムの規模もオンデマンドに変化させられるようになるとした。

こうしたクラウドコンピューティングは、電力や水道といった公益サービスモデルと同じだという。発電方法や送電方法は複雑でも、エンドユーザーの前にはコンセントにプラグを差込んで利用するだけというシンプルなインタフェースだけがある。そして、利用した量に応じて料金を負担し、キャパシティは需要に応じて柔軟に提供される。

「オラクルクラウドを経由して完全な、包括的なコンピューティングサービスを提供できる。そしてクラウドコンピューティングの3つのレイヤー、SaaS、PaaS、IaaSの全てが揃っている」としたエリソン氏は、アプリケーション・サービス、PaaSの特徴や、Oracle Cloud IaaSについて語った。

オラクルが提供する3タイプのクラウドサービス

100以上あるオラクルのクラウドアプリケーション

アプリケーション・サービスの主な特徴

PaaSの主な特徴

Oracle Cloud IaaS

他社サービスと比較して特に強調されたのは、標準技術を採用しているということだ。

「オラクルのアプリケーションは、Javaを使い、業界標準のミドルウェアをベースに開発。さらに業界標準のデータベースを使っている。SOAを使っているのも標準であることと、インテグレーションを簡素化するためだ。全ては標準技術を採用している」と語られた。

また、マルチテナントをアプリケーション層ではなくデータベースで実現していることも大きな特徴だとしている。アプリケーション層でマルチテナントを導入していると、サービスプロバイダ側でシステムをアップデートするタイミングに合わせて、全利用者がアップデートしなければならない。企業側のタイミングでのアップデートは不可能だ。さらにアプリケーション層でのマルチテナントはセキュリティ的に脆弱であり、標準的なデータベース・ツールが利用できない。そうした問題を「Oracle 12c」は独立したプラガブル・データベースとデータベース・レベルのセキュリティによって解決。全てのデータベース・ツールが利用可能だ。

Oracle 12cが実現するセキュアなマルチテナント・データベース

基調講演の中盤では、ゲストとしてソフトバンク 代表取締役社長である孫正義氏が登場。友人でもあるエリソン氏と「ビジネスと社会のインフラとしてのクラウドが創造する価値」をテーマに、ジョークを交えた軽妙な会話を披露した。

ソフトバンク 代表取締役社長 孫正義氏

終盤には孫氏が実際にソフトバンクで行われているビッグデータの活用事例を3つ紹介した。1つは、パケット接続率調査だ。iPhone/Android向けに通信の接続状況を取得するアプリを提供しており、これを利用して毎月1億9,000万件の通信ログを取得。具体的につながりづらい場所や時間帯等を分析し、基地局等の設備投資を効率化するために利用しているという。その結果電波接続状況が大きく改善し、他の2キャリアと比較してもパケット接続率で勝利できるようになったという。

もう1つは、利用者が実際に電波改善の実感を持っているかどうかについてTwitterやFaceBookの投稿8200万件を解析。分析結果を満足度向上に活用しているという。もう1つは、行動ターゲティングに基づいた自動分析で、Yahoo! JAPANの持つ月間500億ページビューの行動履歴を分析してターゲットを絞り込み、効率的な広告表示を行っているという。

「こういった取り組みをしているから、ソフトバンクは純増率ナンバー1になった。偶然伸びたわけでも、犬のお父さんや白戸家を使って宣伝しているからだけでもない。金を使うのではなく、頭を使った結果の伸び」と強調した孫氏は、「これを実現しているのが、オラクルのソリューション。オラクルにとってソフトバンクは日本における最大のパートナーだ」と締めくくった。

膨大な接続状況データを分析して効果的な投資し、接続率を向上させた

Tweet分析により満足度向上を実現