島津製作所は4月8日、高出力レーザの使用に最適なレーザミラーおよびレーザウィンドウを発表した。
レーザ応用分野の発展に伴い、産業分野においてはレーザ加工の速度向上、医療分野においてはレーザ治療やX線ビームの発生、理化学分野においては感度の高いレーザ計測など、これらの実現に向けて、より高出力なレーザの実用化への期待が高まっている。しかし、レーザ装置の構成部品として不可欠である光伝送(反射)用のレーザミラーや、光透過用のレーザウィンドウといった光学素子は、高出力のレーザ光が当たると破壊され、機能を失ってしまうという問題があり、さらにレーザ耐性の高い光学素子の開発が求められていた。
島津製作所では、日本原子力研究開発機構と共同で、レーザ光による光学素子の破壊メカニズムを解明。この破壊メカニズムに対して有効な、結晶化しにくいアモルファス膜を成膜する技術を開発した。また、高反射率と高透過率を確保するため、異なる屈折率の物質を数百ナノメータオーダーの膜厚で交互に数十層積層する誘電体多層膜成膜技術を加えることで、多層膜間の界面粗さを極限まで小さくして、散乱損失を極限まで抑えたという。これらにより、YAGレーザの波長において、レーザミラーで従来比1.4倍、レーザウィンドウでは従来比1.6倍となる耐性が得られた他、レーザミラーは反射率99.9%以上、レーザウィンドウは透過率99.5%以上と、高い性能も実現した。
すでにレーザミラー36種、レーザウィンドウ12種をラインアップしている。波長は、YAGレーザの基本波で使用される1064nmおよび第2高調波532nm、チタンサファイアレーザの750~850nmに対応し、外形はレーザミラーはφ0.5~5インチの6つのサイズから、レーザウィンドウはφ0.5~3インチの4つのサイズから選択可能。さらに、レーザミラーは入射角を0度と45度の2つから選択できる。全てRoHS指令に適合する。なお、コーティング特性、基板形状など、要望に応じた特別仕様にも対応する。価格はレーザミラー、レーザウィンドウともに1万3000円~15万円。
島津製作所は、国内外のレーザ加工機メーカを中心にOEM供給することにより、2016年度にはカスタマイズ品も含め1億円の売り上げを目指す。また、2012年9月に発売した外部共振器型短パルス半導体レーザ「BEAM IMPACT」シリーズと合わせ、次世代高機能レーザ加工機向け事業を進展していきたいとしている。