東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構(カブリIPMU)は、2011年にM51銀河にて観測された超新星について、ハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測により、黄色超巨星が姿を消したことを確認、黄色超巨星が爆発したとするカブリIPMUのMelina Bersten特任研究員らの理論モデルを証明と発表した。
星が自分自身の質量を支えきれなくなり、急激につぶれて大爆発を起こす「重力崩壊型超新星爆発」が発生するほぼ質量の大きな星は、従来、爆発の直前には赤色超巨星か青色コンパクト星(ウォルフ・ライエ星)に進化すると考えれられていた。
しかし、2011年にM51銀河に出現した超新星「SN 2011dh」は様子が従来と異なり、爆発の起こる場所に、星の進化の途中であり、超新星爆発を起こさないはずの黄色超巨星があったことから2つの説が提唱され、議論が繰り広げられていた。
1つは早期の光学観測や電波観測に基づいたもので、爆発した星は暗くて見えない青色コンパクト星であり、見つかった黄色超巨星は爆発した星の伴星もしくは超新星とは無関係で、地球からは偶然同じ場所に見えていた、という説。
もう一方はカブリIPMUなどの研究グループが提唱する説で、研究グループでは、初期の光度曲線を流体力学的計算によるモデル化により、爆発した星が黄色超巨星であるとしたときのみ、観測された光度曲線をよく再現すること、ならびに2つの大質量の星が非常に接近した連星系の進化を計算し、黄色超巨星に成長して爆発する場合があるというもの。
爆発前の星が黄色超巨星の場合(黄線)および青色コンパクト星の場合(青線)の理論計算による光度曲線。SN2011dhの観測データを水色の点で重ねた。黄色超巨星と考えた場合のみ理論曲線が観測結果がよく再現されていることが分かる (出所:カブリIPMU Webサイト) |
また、同研究グループは、これらの計算結果から、超新星の光が収まった後、黄色超巨星は観測されず、伴星の青色コンパクト星が観測されることを予測しており(もう1つの説では、超新星の光が収まった後、再び黄色超巨星が観測されると予想されていた)、2013年3月に行われたハッブル宇宙望遠鏡による観測から、超新星の場所が、爆発前にあった黄色超巨星の明るさより暗くなっていること、すなわち、黄色超巨星が確かに無くなっているが確認されたことから、同研究グループの予測が観測により証明されたこととなった。
この結果を受けて研究グループでは、最後の課題として残されているのは、連星のモデルから予測される、黄色超巨星の伴星であった星を発見することと説明する。計算では、黄色超巨星が爆発した時点で、伴星は大質量の青色の星に進化しているはずで、表面温度が高くなっているため、紫外線領域の光を発し、爆発前の可視光領域の観測では黄色超巨星の明るさに隠されていたと考えられるとしているが、超新星爆発の光が十分に暗くなった後であれば、暗い伴星でも観測可能になることが予想されるため、2014年にハッブル宇宙望遠鏡や、すばる望遠鏡を用いて改めて観測を行うことで、提唱している超新星爆発メカニズムのモデルの最終的な検証を行いたいとしている。