ユニ・チャームは4月4日、乳幼児を対象に触感に対する脳の血流量変化を近赤外線分光法(NIRS)を用いて測定したところ、赤ちゃんは紙おむつ素材の触感の違いを区別しており、素材の気持ち良さを実感していることを実証したと発表した。
同成果は同社生活科学研究グループならびに長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の篠原一之教授らによるもので、詳細は2013年3月27日に開催された「第90回日本生理学会大会」にて発表された。
近年の研究から、乳幼児が認知・情動能力によりさまざまな外界の感覚刺激に反応し、外界に適応していることが報告されるようになってきたが、乳幼児の触覚に関してはほとんど研究が行われてこなかった。
そこで今回、研究グループでは、乳幼児が日常生活において触れている紙おむつ素材に焦点を当て、乳幼児が紙おむつ素材の触感を区別できるているのか、また区別できているのであれば、どのように感じているかについての検証を行った。
実験方法は、生後2~6カ月の男児12名、女児14名の健康な日本人乳児を対象(期間は2012年2月~同10月)にして、触刺激を乳幼児の左腰部へ呈示した時の前頭前野(APFC:眼窩前頭皮質(OFC)と前頭極皮質(FPC))の脳の活動を調べた。
実際に協力してくれた赤ちゃんにNIRSを装着している様子 |
脳の活動性は、NIRSで酸化ヘモグロビン量を測定することで計測され、素材風合いの異なる2種類の紙おむつの素材サンプル(サンプルRおよびサンプルP)を、それぞれ30秒間触刺激として与える試験を2回繰り返す形で行われた(触刺激呈示の圧力は約10hPa、速度は約2cm/秒)。
この結果、乳児の左腰部において、サンプルPはサンプルRに比較して、6倍の脳血流量の増加が見られ、有意に高いAPFCの活動性が見られたという。これは、乳児が紙おむつ素材の触感の違いを、おむつを装着する腰部において、感じ取っていることを示唆するものだと研究グループは説明するほか、APFCは報酬系(快の情動や認識を担う神経系)の役割を担っていることが知られていることから、乳児はサンプルRに比べて、サンプルPの触感を気持ち良いと感じていると考えられると指摘する。
なおユニ・チャームでは今回の成果であるNIRSによる乳児の触感評価法を用いることで、素材の触感の改良を進めることが可能となったとするほか、追加試験により、母親が手のひらで撫でた時の触覚刺激が赤ちゃんにとって気持ち良く感じる触感であることも判明したこと、ならびに、さまざまな先行研究で示されている、母親が赤ちゃんを撫でるなどのスキンシップを多く取ると、母子間の愛着の形成が促進されることなどから、母親のスキンシップが赤ちゃんにとって理想的な触感であると言えるとしており、今後、新素材の風合いを、母親のスキンシップのような"赤ちゃんが気持ちいい"と感じる触感に近づけるように素材の工夫や商品開発への応用につなげていきたいとしている。