国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されている素粒子検出器(アルファ磁気スペクトロメータ:Alpha Magnetic Spectrometer、AMS)を運用する国際研究チームは4月3日(スイス時間)、その最初の分析結果として、宇宙線の中から暗黒物質(ダークマター)の証拠を検出した可能性があると発表した。

AMSの運用は、15カ国のCERNやNASAなど54機関が参加する国際研究チームが行っており、今回の成果の詳細は米国物理学会誌「Physical Review Letters」に掲載される予定。

AMSは2011年にISSに設置された、宇宙線陽電子や反陽子をプローブとした暗黒物質の間接探索や反物質の直接探索などの実験に用いられる装置。2011年5月19日から2012年12月10日までの約1年半で、約250億個の宇宙線を検出し、その中から0.5GeVから350GeVの間にある約40万個の陽電子を同定。陽電子比(陽電子/陽電子+電子の割合)を測定した結果、0.5G~10GeVの間では減少し、20G~250GeVの間で増加するといった、宇宙空間におけるダークマターが対消滅することで発生する陽電子の計算と一致したことがダークマターを検出した可能性がある理由としているが、まだほかの可能性を除外するのに十分なデータではないとも説明している。

AMS-02によって測定された陽電子比とモデル計算の比較図 (出所:CERN Webサイト)

そのため、AMSチームのスポークスパーソンであり、ノーベル物理学者でもあるSamuel Ting博士は、「今回の成果はAMSの性能を示す良い結果となった」とするほか、陽電子はパルサー(超新星爆発で生じる高密度天体の中性子星)やガンマ線バーストなどからも発生することから、「今後の観測により、これらの陽電子がダークマター由来のものであるのか、それとも別の要因によるものなのかが分かってくるはずだ」とコメントしている。

なお、AMSは今後、さらに測定精度を向上する改良が図られ、250GeV以上のエネルギーの測定が可能になる予定だという。

ISSに搭載されているAMS-02 (c)NASA