米Successfactorsは、タレントマネジメントシステム「SuccessFactors Business Execution スイート」をはじめ、社内SNS「Jam」やeラーニングマネジメントシステム「SuccessFactors Learning」、採用管理「SuccessFactors Recruiting」、コア人事システム「Employee Central」など、ワールドワイドで多彩なソリューションを提供している企業だ。
米SuccessfactorsでPresidentを務めるShawn Price氏 |
2009年に日本法人のサクセスファクターズジャパンを設立し、日本市場への進出強化を図っているほか、2012年12月にはSAPが米Successfactorsを買収。SAP側では人材関連のソリューションが大幅に拡充された一方で、Successfactors側でも強力なバックボーンを得て、より利便性の高いソリューションの提供が可能となっている。
本誌は、米SuccessfactorsのPresidentを務めるShawn Price氏に、HR分野の市場動向や取り組みのポイントなどを聞いた。
大きな変革の時期を迎えるHR分野
Price氏は「現在、HR(Human Resources)は世界的に大きな変革の時期を迎えています」と語る。
この変革の背景となるのが労働者の高齢化だ。時期が来れば高いスキルを持つ労働者は企業を去るため、新しい人材を採用しなければいけない。しかし、そこには絶対的な経験値の差が存在しており、企業はそれを埋める採用方法を模索する必要が出てくる。
「つまり、高齢化と経験値のギャップを埋めるための人材戦略が今後の鍵を握る。そのために"Recruit to Retire"の従業員を全般的に網羅するソリューションが必要」とPrice氏は続けた。
こうしたソリューションの実現に向けて、これまでSAPは必要なアプリケーションの提供企業を買収、傘下に取り込むといった取り組みを10億ドル規模で行ってきた。そのSAPが、今後の規模拡大を期待しているのが日本市場だ。
実績に裏付けられたソリューションの実力
日本において、特に大企業の場合はグローバル展開を積極的に進めているため、たとえ本社が日本国内にあってもさまざまな国で人事戦略を行う必要が出てくる。こうした状況では、それぞれの国や地域で異なる要件について、どのように対応していくかが大きな課題といえるだろう。
そこでSAPでは、数十年のビジネスで培った膨大なノウハウと経験則、そしてクラウドという新しい環境を用いることで、こうした課題に十分対応できるソリューションを実現。導入事例においてほぼ100%という非常に高い成長率を記録している点からも、その実力が証明されている。
また、Successfactorsが提供するソリューションだけを見ても、いかに現在の企業ニーズにマッチしているかは明らか。ワールドワイドの導入件数ベースで約1800万という数値を記録し、毎日1万3500人が同社のソリューションを通じて新たな業務を開始している。給与ベースでは年間で数百億ドル規模にまで及ぶそうだ。
アプリケーション単体からクラウドやハイブリッド型へ
Price氏にソリューションの導入に関するトレンドを聞いたところ「最初は、タレントマネジメントシステムやeラーニングマネジメントシステムなどの単一アプリケーションからスタートし、徐々にコア人事システムなどの採用へと進むお客様が多いです。また、最近ではクラウド利用の方向へシフトしたり、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッド型を活用する傾向も見られています」という答えが返ってきた。
このハイブリッド型は、HRの基本的な部分をオンプレミス環境でカバーし、タレント管理や採用管理、目標管理、ラーニングなどをクラウドで追加していくというもの。日本では特にクラウド利用が加速しており、こうした観点からもアジア太平洋地域にある他の国々と比べて大きな潜在的期待値を秘めているそうだ。
そのほか、各種アプリケーションのモバイル対応、ソーシャルネットワークへの対応、最近では円相場の変動が企業のグローバル展開に与える影響なども注視しているという。
企業において重要度が増すHR分野
Price氏はHRの重要性について「企業が戦略を立案し、それを実行していく上でもっとも基本となる要素が人材であり、いかに適正な人材を適正なところへ配置できるかが求められます。また、それぞれの国や地域に応じて離職率やリテンション率がなぜ異なるのかをしっかりと把握し、計画に盛り込んでいくことも必要です」と語る。
さらに、日本では比較的馴染みが薄い"タレントマネジメント"に関しても「テクノロジ部分を除いたタレントマネジメントという概念自体は、皆さんが想定されているより広範に浸透しています。この概念を基本として、実際のプランニングや指標化を支援するのがテクノロジの役割です」と続ける。
これらテクノロジで得られた結果を、人材の潜在的な能力評価に利用していくのである。場合によってはラーニングマネジメントなどを組み合わせることで、"この領域ではどのようにして潜在的能力を伸ばしていけるか"といった部分までリンクさせることが可能だ。
最後に「グローバル化が進む中で、人材への投資を最大化することが極めて重要になってきています」と、HR関連分野で市場拡大が期待される日本の企業にメッセージを送るPrice氏。「ぜひもうひとつお伝えしたいのが、これから企業が新しい人材を採用・活用していくにあたり、古いシステムでは対応できないということです」とも続ける。
いま、世界は日々変化を続けており、そのスピードが加速する中で、古い既存システムによる対応が難しくなってきた。SNSを当然のように使う世代が入社し、社内システムの不便さを口にするケースは少なくない。また、HRの分野では、各種規制の変化などを含めて柔軟な対応が求められている。こうした状況下において、Successfactorsのソリューションが今後より大きな価値を生み出すことは間違いないだろう。