TANAKAホールディングスは3月26日、田中貴金属グループの2012年度「貴金属に関わる研究助成金」の受賞者を発表した。
同助成金制度は、貴金属を使用した研究・開発を行なう国内の教育機関、公的研究機関に対して「貴金属が拓く新しい世界」へのさまざまなチャレンジを支援するもので、1999年度から毎年実施されてきたもの。今回は、過去最多となる160件が応募があり、その中で最高金額となる「500万円」が授与される「プラチナ賞」には該当者がいなかったものの、200万円を授与される「ゴールド賞」には、助成金制度開始以降、初めて3件の同時採択となったほか、50万円が授与される「シルバー賞」も過去最多となる12件が、そして20万円が授与される「MMS賞」には20件が選出され、総額1600万円の研究助成金が授与されることとなった。
ゴールド賞を受賞した3件の研究は、1件目が岩手大学の山口勉功 教授による「ルテニウム含有銅合金におけるイリジウムの偏析挙動」というもので、ルテニウムやイリジウム、白金などの白金族金属を高品位で回収することができる乾式精錬を行う際、コレクターメタル(抽出剤)の1つである銅に対する各白金族金属の挙動を把握することを目的としたもので、これまで銅-イリジウム-ルテニウムの三元系状態図に関する報告例が過去に存在していないことから、この研究によって、白金族金属回収時の実操業への展開などが評価されたという。
2件目は東北大学の齊藤伸 准教授の「貴金属を含む合金薄膜の稠密面原子積層による一軸性のイノベーションと磁気ストレージデバイスへの展開」というもの。貴金属が多く用いられているHDDの性能向上に向けて、価電子制御や積層欠陥制御などの側面から検討するほか、貴金属材料や非金属材料などの添加効果を含めて考察することで、次世代磁性体材料に関わるソリューションを提供できる可能性を見出せる点が、評価されたとする。
そして3件目は兵庫県立大学の福岡隆夫 技術支援員の「ステルスナノビーコン」というもので、偽造や複製が不可能で第3者の目に見えないマーカーを金ナノ粒子集合体で作りだし、あわせて簡単にマーカーを検出するシステムを提案したもの。高機能な医薬品や食品がグローバルに流通する時代において、その正当性や安全の維持を実現する技術として、人類や社会への貢献度が高いことが評価されたとしている。
なお同社では、2013年度の研究助成金については、2013年秋に募集を開始する予定としている。