フルヤ金属は3月27日、従来の約20倍の耐久性を実現しながら、2100℃までの超高温域を高精度で計測できるイリジウム-ロジウム合金(IrRh)熱電対を発表した。4月1日より発売する。
同製品は超高温用温度センサで、パワー半導体用のSiC基板、LED用サファイア基板、セラミックスなどの製造工程における1700℃~2100℃の超高温プロセスの制御に適している。不活性アルゴンガス雰囲気下で800℃~1700℃の昇降温を繰り返して、素線が破断するまでの回数(温度ハンチング耐性)を測定すると、約230回であり、実用レベルの耐久性を実現している。
現行の熱電対温度測定法であるタングステン-レニウム合金(WRe)熱電対は、温度ハンチング耐性が約10回であり、今回製品化するIrRh熱電対は、従来の約20倍の耐久性を有することになる。また、温度測定精度は国際的な工業規格であるASTM(米国試験材料協会)規格の温度保証範囲を満たしている。
熱電対は、種類によって使用温度範囲や測定精度などの特性が違うため、ユーザーは使用目的に応じて種類を選択する。1700℃~2100℃の超高温を測定する方法には、WRe熱電対を使う方法がある。WRe熱電対は、ASTM規格に準拠しているが、材料の特性上、酸化雰囲気下では使用できないため、通常は不活性雰囲気下で使用される。しかし、高温測定後は非常に脆くなっており、簡単に折れてしまうという欠点があるため、現状は限られた環境や用途のみで使われている。このため、大半は1700℃~2100℃の超高温を測る際、放射温度計を用いている。放射温度計は、熱電対のように被測温物の温度を直接測らずに、被測温物が発する赤外線を用いて非接触で測定する。ただし、放射温度計と被測温物までの距離や、その間の遮蔽物などによっては測定が困難など、精度に欠けるという問題があった。このため、測定値の判断は、熟練した職人の感覚や経験に頼るしかなく、生産の歩留りを低下させる恐れがあった。
こうした問題を解決するため、今回同社は、高い耐久性と高精度を両立する熱電対を新たに開発。長年培ってきたイリジウムの加工技術を応用し、プラス線がIrRh40(イリジウムが60%、ロジウムが40%)、マイナス線がイリジウムで熱電対の素線を構成されている。また、素線だけでなく、耐熱性や耐食性に優れたイリジウム保護管の開発にも成功した。イリジウム保護管を合わせて使用することで、さらに高い耐久性を実現することができる。なお、真空および不活性雰囲気下での使用を推奨しているが、使用条件(酸素濃度、測定温度、熱電対構成部材、炉内構成部材など)によっては、酸化雰囲気下でも使用できる。
同製品の用途は以下の通り。
- パワー半導体のSiC基板の製造プロセスと熱処理プロセス
- LED素子の基板材料として使われるサファイア結晶の育成プロセス
- 圧電デバイスや医療機器用の酸化物単結晶の育成プロセス
- 自動車排ガス浄化用セラミックスの焼成プロセス
- ガラスや鉄鋼などを溶解する際の高温耐熱部材として使用されるセラミックスの焼成プロセスなど
なお、ユーザーがより安価で簡便に計測できるように、このIrRh熱電対に適した補償導線と専用の温度表示器も開発し、4月1日から発売する。フルヤ金属では、同製品を半導体やLED、車載材料、各種セラミックス、鉄鋼、非鉄金属など幅広い業界に提案し、3年間で5億円の売り上げを目指している。