村田製作所は3月28日、ワイヤレス電力伝送システムの新技術として「直流共鳴(Direct Current Resonance)方式」を開発したと発表した。
直流共鳴方式は、直流の電気エネルギーを電磁界エネルギーに変換し、電磁界共鳴フィールド(Electromagnetic Resonance Field)と呼ぶ新しい物理現象を用いて電力を伝送する。村田製作所では、1994年に国際学会で発表した磁界共鳴方式の先行研究をベースに、2009年より同志社大学との産学連携で研究活動を進めてきており、今回、新しい物理現象とする電磁界共鳴フィールドを用いた直流共鳴方式ワイヤレス電力伝送システムを開発。今後、事業化、実用化に向けて本格的な開発を進めて行くとする。
同方式は、直流電力源からのワイヤレス電力伝送システムであり、直流電力源よりエネルギー変換を行うため、高効率化が可能。また、電気エネルギーと電磁界エネルギーを直接的に変換するので、従来はワイヤレスで電力伝送するにあたり、4~6回ほど電力変換が必要だった工程がダイレクトに1回で変換することも可能になると考えられ、高い省エネ効率と小型軽量が図れるという特長がある。
さらに、送受電デバイス、共鳴デバイスの工夫により共鳴フィールドを拡大させることで、複数負荷への給電などが可能となっている。
現行方式と比較した場合、磁界共鳴方式と比べると、構成がシンプルであり、小型軽量となり、システムの電力効率を高められる。一方の電磁誘導方式と比べると、送電、受電の配置自由度が高く、重い磁性体(鉄)や巻線(銅)は不要。そして電界結合方式と比べた場合、伝送距離を大きくしたいときに優位。物理的接触のない無線電波方式と比べても、伝送電力が大きい。送電装置、送受電デバイスを小型にできるといったメリットがある。
今後は、ワイヤレスであることの価値が高い分野での活用を目指していくとのことで、スマートフォンやタブレットなどの移動体機器に限定することなく、電池で動作する小型電子機器や通信カードへの給電なども視野に入れ、比較的電力の小さい用途を主体として展開する方針。また、電気自動車の充電など、比較的電力の大きい用途については、オープンイノベーションなどを活用し、技術支援やライセンス提供を行うことも検討している。さらに、研究開発活動の推進および成果の普及を促進して行くことで、注力するエネルギー分野においても、新たな市場の創出と製品展開を図りたいとコメントしている。
なお、詳細は3月19日~3月22日に開催される電子情報通信学会総合大会シンポジウムセッション「無線電力伝送の高効率化の実現に向けたアンテナ・伝搬、デバイス、システム技術」の他、複数の学会で発表される予定。