走ることにこだわった先行開発車事業第3号「SIM-CEL」
SIM-Driveは3月27日、2012年2月より行ってきた先行開発車事業第3号「SIM-CEL」が完成したこと、ならびに2012年5月より募集していた「先行開発車事業第4号」の開発開始を発表した。
SIM-CELは2015年度の量産化対応を目指した電気自動車(EV)の先行開発車で、EVビジネスに参入を意図している26機関が参加する形で、第1号車「SIM-LEI」、第2号車「SIM-WIL」で実現した航続距離300km以上を維持しつつ、将来の量産時の信頼性とEVの魅力をより多くの人に向けて発信するための車種展開を目指して開発が行われてきた。
車名のSIM-CELはSIM Cool Energy Linkの略で、化石燃料や原子力などのエネルギーに依存しないで、新しいエネルギー循環を生み出し、余分な熱を排出せず、再生可能エネルギーをより有効に利用しようという想いが込められているという。
基本は従来同様、SIM-Driveの保有技術であるダイレクトドライブ方式インホイールモーターと、コンポーネントビルトイン式フレームを採用しつつ、「突き抜ける加速感+ユニークなスペースユーティリテイ」を開発コンセプトに、走りを楽しむことと、EVとしての利点を活用したサービスの活用に向けたさまざまな技術を搭載。参加企業各社から提供された74の先進技術などの活用のほか、車体重量の軽減、モーター内構造の見直しによる最大トルクの850Nmへの引き上げ(従来は700Nm)などにより、0-100km/hを4.2秒で実現しつつ、理論空力造形技術を用いることで、CD値(空気抵抗係数)を0.199(通常の自動車の場合0.3~0.4程度)とし、市販のEV車に比べて2割程度よい電費性能となるJC08モードで91.2Wh/kmを達成している。
また、シャシーはホイールベースは第2号車の「SIM-WIL」と同等の2950mmとしながらも、前輪ならびに後輪トレッドを100mm程度ずつ拡大(前輪は1405mmから1530mmへ、後輪は1375mmから1500mmへ)し、重心を10mm下げたほか、タイヤサイズも185/65R15から195/55R16へ、ホイールサイズも15インチから16インチへとインチアップされているが、最小回転半径5.5mを実現可能となっている。
さらに、スマートグリッドとの連携システム「スマート・トランスポーテーション技術」も併せて開発、搭載されており、特定方式(例えば風力)だけで発電した電力だけで充電し、それを活用して走行したり、店舗の駐車場などにて送電し、電力を供給する代わりに、店舗からサービスを受ける、といったことも可能になるという。
マレーシア企業が参加する「先行開発車事業第4号」の開発
一方の第4号の開発は2013年2月25日より始まっているとのことで、今回は14社・機関が参加し、2014年3月31日までの予定で開発が進められる。
第4号は、これまでの技術に加え、新たに4輪独立制御技術が搭載されるほか、第3号で搭載されたスマート・トランスポーテーション技術の発展が進められる計画。参加を公開している企業は以下の12社で、中でもマレーシアのArcaは同国政府が後押しする形で参加しており、同社では2020年に130万台市場とされる同国の自動車市場の10%をEVで獲得することを目標に掲げており、そのために3年以内にSIM-Driveの技術をベースとしたEVの量産を月産10万台規模で確立させたいと意気込みを語っている。
- Arca
- AZAPA
- アルパイン
- 沖電気工業
- オムロン オートモーティブエレクトロニクス
- カルソニックカンセイ
- 神鋼商事
- 東京アールアンドデー
- 新日鉄住金化学
- 堀場製作所
- 三菱レイヨン
- リコー
SIM-CELの全景。右側の写真に写っている2人はSIM-Driveの取締役会長である福武総一郎氏と同社代表取締役社長の清水浩氏。なお、同社は4月1日付人事として、清水氏が開発に専念するために社長を退き、タジマモーターの代表取締役社長を務めてきた田嶋伸博氏がタジマモーターの社長を退き、新たに代表取締役社長に就任することを同日の会見にて明らかにしている |
SIM-CELのリア部。特徴ある黒地にシルバーのギザギザ(Chevron Spoiler付き段差)は短く切れ上がって軽快なスタイルに見せるというデザイン的な効果のほか、CD値を低減することが解析により判明したという |