ユニチカは3月26日、温州みかん搾汁残さから抽出したβ-クリプトキサンチンの摂取が、食餌性の高尿酸モデルラットおよび軽度高尿酸血症のヒトにて、血中尿酸値の低下作用を示す結果を得たと発表した。
同成果の詳細は「日本農芸化学会2013年度大会」にて発表された。
β-クリプトキサンチンは、温州みかんやパパイアなどに多く含まれる橙色の色素で、ニンジンに多く含まれるβ-カロテンや、トマトのリコペンなどと同じカロテノイドの1種。日本の固有種である温州みかんに特異的に多く含まれている。
また、尿酸は食物から取り込まれるほか、遺伝情報であるDNAを構成するプリン体を体外に排出するために変化した物質で、腎臓でろ過され、尿とともに体外に排出されるほか、アルコールが体内で分解される際にも尿酸が産生することが知られている。そのため、血中尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続くと、尿酸が関節などで結晶化し、痛風を引き起こすほか、心疾患や脳血管疾患などを引き起こす生活習慣病のリスク因子になることが近年の研究から報告されるようになってきている。
今回の研究では、こうした尿酸値を摂取するだけで低下できる食品素材の開発に向けて行われたもので、粉末タイプと乳化タイプのβ-クリプトキサンチンを用いて血中尿酸値への影響の確認を行ったという。
具体的には、プリン体の1種であるイノシン酸を添加した飼料を20日間摂取させた食餌性高尿酸モデルラットを作製。同ラットは、イノシン酸を通常飼料に1%添加することによって、通常飼料を摂取させたラットに比べ、血中尿酸値が有意に上昇していることが確認されたが、イノシン酸と同時にβ-クリプトキサンチン(粉末タイプ)をβ-クリプトキサンチンとして0.02%となるように通常飼料に配合し、摂取させたところ、尿酸値の上昇抑制が観察され、通常飼料を摂取しているラットと同程度まで血清尿酸値が低下することが判明したという。
この結果を受けて、尿酸値低下作用の作用機序解明に向け、ラット腎臓における尿酸の排出・再吸収に関与している遺伝子の発現量解析を実施したところ、尿酸の再吸収に関与していると考えられるURAT-1の発現量がβ-クリプトキサンチンの摂取によって通常飼料摂取のラットと同程度まで正常化することが判明。これにより、イノシン酸投与により過剰発現したURAT-1の発現量を、β-クリプトキサンチンが正常化し、尿酸の尿中への排出を促進することで血中尿酸値を低下することが示唆されたと研究グループは説明する。
また、現在治療などで薬剤を摂取していない成人男性9名(42.9±6.7歳、BMI=23.9±1.8)の軽度高尿酸血症患者(血中尿酸値が7.0mg/dl以上)を対象にした臨床試験では、β-クリプトキサンチン(乳化タイプ)を配合した100mlの試験ドリンク(β-クリプトキサンチンとして0.2mg/100ml)を1日1本、6カ月間摂取してもらったところ、血清β-クリプトキサンチンは上昇した一方、尿酸値は摂取とともに徐々に低下し、4カ月以降は有意に尿酸値の低下が認められたという。ちなみに、この尿酸値低下作用は、元々の尿酸値が高い被験者ほど顕著であったという。
この試験では、開始前と試験ドリンク摂取2カ月ごとに、血清β-クリプトキサンチン、血清尿酸値、肝機能マーカー(γ-GTPなど)、心血管マーカー(CPK、LDH)、血清脂質(T-Cho、TGなど)の測定と、アンケートが実施されているが、各種生化学マーカーなどにはまったく影響が見られなかったという。
すでに研究グループは、別の検討によりβ-クリプトキサンチンを含む試験ドリンク(β-クリプトキサンチンとして0.25mg/100ml×2本/日)の12週間摂取によって、メタボリックシンドロームの発症因子である内臓脂肪の低減作用があることを明らかにしており、今回の結果と合わせて、β-クリプトキサンチンの摂取が総合的なメタボリックシンドロームの予防・改善作用を期待することができるとコメントしている。