日立マクセルは3月26日、電池断面のリアルタイム観察技術を用いて、充放電最中のリチウムイオンの"見える化"技術を確立。同技術を活用して、高エネルギー密度材料を用いて、信頼性や寿命を確保し、従来品比で単位エネルギー密度あたりの重量40%減、単位体積当たりのエネルギー密度1.6倍、寿命10年以上相当の高信頼・長寿命かつ軽量なリチウムイオン電池を開発したことを発表した。
従来、リチウムイオン電池の断面測定は、電極を電池の外へ取り出して測定する必要があり、充放電最中の本当の反応分布を捉えることは困難であった。今回開発されたリアルタイム断面観察技術を用いると、充放電最中にリチウムイオンと負極の反応が偏る瞬間をとらえることが可能であり、これによりリチウムイオン電池の負極において、1カ所にリチウムイオンが集中すると、デンドライト発生の危険度が増すことを突き止めることに成功したという。
また、リチウムイオンの流れが停滞すれば、それが抵抗となり電池容量の低下を招くが、同技術により正極も含めた電池全体のリチウムイオンの流れを可視化することが可能となり、それにより問題となる流れの停滞箇所の特定ができるようになったという。その結果、3次元シミュレーションにより改善点を絞り込むことが可能となり、集中的な対策と無駄のない電池設計ができるようになったことから、電池全体のリチウムイオンの流れをスムーズにする構造へと改良が可能となり、これにより、高エネルギー材料を用いた電池の劣化を抑制し、5000回の充放電後でも、およそ200Wh/Lのエネルギー密度の確保が可能になったという。
さらに、高エネルギー密度材料が使用可能になったことから、同じ電力量を必要とする電池を40%軽くすることが可能になったほか、単位体積あたり1.6倍の電力を蓄えることができるようになり、電池のサイズの小型化が可能になったほか、寿命も10年以上相当の高信頼・長寿命を実現したとする。
なお、同社では今後、同リチウムイオン電池をHEMS用途などの分野での適用に向けた活動を進めていく計画としている。