従業員の業務の評価に用いられる人事考課や勤務評定(パフォーマンスレビュー : Performance Review)。導入している企業は多いようだが、この仕組みに真っ向から反対する経営専門家がいる。事後評価の"レビュー"ではなく、事前に目標を設定して相互に責任を持つ"プレビュー"の導入を、と提唱している。
パフォーマンスレビューを批判するのは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校アンダーソンビジネススクールで経営学教授を止めるSamuel Culbert氏がWall Street Journalに寄稿した記事(原題 : Get Rid of the Performance Review!)。
「(パフォーマンスレビューは)一方向の報告に過ぎず、上司が管理している。機能不全の虚偽に過ぎない」とCulbert氏、その最大の目的は「上司が権威を保持することだ」と厳しく批判する。パフォーマンスレビューの問題として、Culbert氏は以下の7点を挙げる。
- 上司と部下でパフォーマンスレビューに対する考え方は異なる
- 業務執行(パフォーマンス)で必ずしも報酬を決定できるわけがない
- レビューとは主観的なもの。客観性は約束されていない
- パフォーマンス測定に"ワンサイズ"の既製服アプローチは間違っている
- 個人の能力開発を阻害する
- チームワークを妨害する
- 企業全体の改善に相反する
たとえば5.の能力/スキル開発。パフォーマンスレビューを導入するメリットのひとつと考えられているものだが、Culbert氏は"能力開発を支援できる最適な人は上司だ"という固定観念を疑問視している。人は自分を評価する立場にある人に、できない自分を素直にさらけ出せるだろうか? 結果として、口だけ(「鋭意努力しています」)の会話になってしまう、と。心当たりがある人もいるかもしれない。
Culbert氏が代案として提唱するのがプレビューだ。これまでの過去に基づいたレビューではなく、将来にフォーカスした話し合いをという。全社共通の目標に向け、個人レベルの目標を設定するにあたって、上司と部下が過去の成功例や失敗例を議論しながら問題解決に向けた話し合いをすることだ。
部下が設定した目標を達成するにあたり、上司の役割は「ガイド/コーチ/チューターとなり、大きな視野を提供すること。そして、部下の成功に必要と思われることを支援すること」とCulbert氏。上司は部下に対し、自分が得意だと思うこと、これまでの失敗から学んだことなどを積極的に質問をする。最後に、どんな支援を自分に望むのかを聞き出すように、と助言する。
このように、パフォーマンスレビューの代わりにプレビュー構造を導入することで、上司と部下は重要な事柄についてより直接的に話しができるようになるとCulbert氏。
いかがだろうか? 新しい年度に向け、評価システムを見直す際に参考にされたい。