パイオニアとロームは3月25日、テラヘルツ波の発振・検出に小型半導体素子「共鳴トンネルダイオード」を用いたテラヘルツイメージングに成功したことを発表した。

同成果の詳細は2013年3月27日から神奈川工科大学にて開催される「第60回応用物理学会春季学術講演会」において共同発表される予定。

光と電波両方の特性を兼ね備えているテラヘルツ波は、物体内部の透過像の取得や分子相互作用の検出が可能なため、セキュリティ分野や分光分析分野などでの応用が期待されている。しかし、室温で安定的かつ直接的にテラヘルツ波を発振・検出できる小型で安価な半導体デバイスがこれまでなかったことから、システムの小型化と低コスト化が課題となっていた。

そうした課題に対し、ロームは、2011年に1チップでテラヘルツ波の発振・検出が可能な小型素子「共鳴トンネルダイオード」を開発しており、今回、パイオニアが光ディスクドライブ用ピックアップの開発で培ってきた光学技術・小型化技術と、ロームの半導体技術を組み合せることで、テラヘルツ波を発振・検出可能な共鳴トンネルダイオードのイメージング分野への可能性の検証が行われたという。

ロームが開発した共鳴トンネルダイオード素子

レンズを装着した「共鳴トンネルダイオードモジュール」

具体的には、共鳴トンネルダイオードで発生したテラヘルツ波(0.3THz)をリレーレンズを介して集光できる「共鳴トンネルダイオードモジュール」を作製し、集光したテラヘルツ波に対して測定対象物を2次元走査(スキャン)させることで、肉眼では中身を見ることができない不透明樹脂ケース内に収納されたクリップやコインなどの透過画像を、X線を使うことなく取得することに成功したという。

共鳴トンネルダイオード透過イメージング測定システム

不透明樹脂ケースの透過像

なお研究グループは今後、さまざまなテラヘルツ応用分野に向けて研究開発を進展させ、小型で安価なテラヘルツイメージングシステムの実現につなげていく予定としている。