海洋研究開発機構の鈴木勝彦・海底資源研究プロジェクト主任研究員と東京大学大学院のエネルギー・資源フロンティアセンターの加藤泰浩教授らは、小笠原諸島・南鳥島(東京都)周辺の海底下で、最大約6,600ppm(ppmは100万分の1)の超高濃度のレアアース(希土類)を含む堆積物(レアアース泥※)を発見したと発表した。

今年1月に行った深海調査研究船「かいれい」による調査で、南鳥島周辺の水深5,600-5,800メートルの海底7カ所で堆積物の試料を採取し、レアアース濃度の鉛直分布を調べた。その結果、海底下3メートル付近の地層に6,500ppmを超える超高濃度のレアアース泥が存在することが分かった。さらにレアアース泥は複数地点の海底下10メートル以内の浅い場所からも出現した。特に5,000ppmを超える高濃度のレアアースは、レアアース泥の上端1-2メートル以内に存在することも明らかになったという。

レアアースは世界生産の9割以上を中国が占めている。今回、高濃度のレアアースが発見された場所は日本の排他的経済水域(EEZ)内で、レアアースの元素のうちでも、ハイブリット車のモーターなどに使われる「ジスプロシウム」は中国鉱山の32倍の濃度が含まれるという。

今回の研究成果は、南鳥島周辺のレアアース資源の埋蔵量や分布、成因の解明研究や開発などに必要な科学的知見をもたらすものと期待される。成果の詳しい内容は、新たなデータ解析結果を加えて、今年5月に開かれる「日本地球惑星科学連合2013年大会」で発表する予定だという。

※レアアース泥:太平洋の深海底に広く分布する、レアアースを豊富に含んだ暗褐色の泥質堆積物。▽レアアースに含まれる17元素のうち、特にジスプロシウムやルテチウムなどの重い元素「重レアアース」の含有量が高い▽海底に広く分布しているために資源量が膨大▽地層として分布しているため探査が容易▽開発の障害となる放射性元素(トリウムやウランなど)を含まない▽レアアースの抽出が容易 -- などの特長を持つ。加藤泰浩教授らによって発見され、2011年7月に「ネイチャー・ジオサイエンス誌」に発表された。

今回の南鳥島周辺の調査地点

調査地点PC4、PC5における総レアアース濃度の深度分布

(提供:いずれも海洋研究開発機構、東京大学)

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