TANAKAホールディングスは3月21日、同社グループにおいて製造事業を展開する田中貴金属工業が、従来品比で半分の材料コストで、実装面積1.2mm×1.0mmの小型水晶振動子を気密封止することができる金すず合金融着材(AuSn合金リッド)を、3月22日よりサンプル出荷することを発表した。

リッドは、携帯電話やスマートフォン、パソコン、車載機器などの電気信号制御に使う水晶振動子の真空封止を行うための蓋状の部品で、電子機器の高密度実装化に伴うデバイスの小型化要求により、近年、パッケージの小型化が加速している。現在量産されている水晶振動子は1.6mm×1.2mmの1612サイズが主流だが、次世代の水晶振動子として、一回り小型の1210サイズが2014年に量産される予定となっている。

こうした水晶振動子を入れるセラミックパッケージを気密封止する方法は多々あるが、従来は安価なシーム溶接やダイレクトシーム法などのリッド部材を用いた方法が主流であったが、こうした従来手法による生産性は低く、かつ溶接するために使うローラー電極のスペースに制約があるため、小型化や低背化が求められる2.0mm×1.6mm以下の小型サイズ品の気密封止は困難となっており、そうした小型サイズ品に対しては、溶接する部材の加熱を炉内で行う「炉中ろう付」による封止方法が用いられるようになってきている。しかし、同封止方法は接合材料にAuSn合金を使うため、Auの材料コストが高いことなどが課題となっていた。

今回開発されたAuSn合金リッドは、1.2mm×1.0mmの小さなコバール基材上に、サン幅が0.10mmで、板厚が0.010 mmのAuSn合金のワッシャーを正確に位置決めできるため、リッドとしての溶融形状をコントロールすることが可能となっている。そのため従来品よりサン幅を0.15mmから0.10mmに、板厚を0.015mmから0.010mmにそれぞれ細く、薄くしても従来品と同じ封止信頼性を実現することが可能となっており、従来品比で半分の材料コストで製造が可能となるという。

また、濡れ性に優れるAuSn合金により、ボイド発生などのトラブルが少ない優れた封止信頼性を実現しているほか、使用条件に合わせて、合金の組成調整が可能であったり、AuSn合金がパッケージの内側へ流れない設計のため、必要十分な合金の量で高い封止信頼性を実現することができるようになっているという。

なお同社では、国内外の水晶振動子メーカーを対象に、同AuSn合金リッドを提供し、量産が進む2014 年には加工料として、月間3000万円の売り上げを目指すとするほか、今後は「1008 サイズ」や「0806 サイズ」などの超小型品への対応や封止性向上に向けた研究を進めていく計画としている。

今回開発された1210サイズの水晶振動子用AuSn合金リッド