新たな景気刺激策の期待などにより、日本経済にはいくぶん明るい兆しが見えつつあるものの、「優秀な営業担当者がいない」「相変わらず忙しいのに売上げは下がっている」「取引先が限定していて先行きが不安…」など、中堅中小企業の経営者は様々な問題に頭を悩ませています。NECではこうした悩みにお応えするため、クラウド型ビジネスプレイス「N-town」(エヌタウン)の提供を開始。IT活用の支援にとどまらず、専門家による経営相談やビジネスのマッチングまで、ビジネスに関する様々な困りごとを解消する場を目指しています。ここでは、中堅中小企業が現状抱えている課題と、それに対するN-townの可能性について、株式会社日本能率協会コンサルティングと日本電気株式会社(以下NEC)のキーパーソンが語り合いました。
――日本経済の屋台骨を支える中堅中小企業に元気がない状況が続いています。いま中堅中小企業の経営者はどのような悩みを抱えているのでしょうか。
松本賢治氏(以下、松本氏):やはり一番の悩みは、「売上が伸びない」ということに尽きるでしょう。長期にわたる景気低迷を背景に商品自体の売れ行きが思わしくないという状況に加え、例えば部品メーカーなどでは取引先からの厳しい値下げ圧力にさらされて単価がどんどん下がっています。流通・サービス業においても、価格競争の下、販売単価や客単価の値下がりが加速しています。その結果、生産量や業務量には大きな変化がないにもかかわらず売上が年々低下しているわけです。こうした状況の中、「可能な限りコストダウンしよう」とか「従業員の生産性を向上しよう」、あるいは「不良を減らし、歩留りを上げよう」「サービスレベルや品質を上げよう」といった活動を試してはいるものの、そういったノウハウが蓄積されておらず、どうやったらいいのかわからないという経営者の方が多いようです。
柳田真氏(以下、柳田氏):また、技術や製品はあっても、販売力がないという悩みも良く聞きます。「新製品の開発に取り組んで、新たな市場に打って出よう」と考えるわけですが、実際にはそのための販路開拓の手段もわからなければ、新たな人材を確保することも難しい。販路開拓に課題を抱えている企業も少なくありません。
横川省三氏(以下、横川氏):人材の確保という観点では、事業自体が業務に精通しているベテランなど一部の社員に依存しているケースもあるようです。中堅中小企業なので、小回りを生かしたサービスといったところを売りにしたいが、小回りを利かせるということは、納期やいろんなサポート、製品のカスタマイズなどを行う必要性が出てきます。そうすると、とたんに設計や納期管理が難しくなり、できる人が本当に限られてくるわけです。さらに、そうした販路や人材の問題を解消するために、コンサルティングなど外部の専門的なサービスに相談しようとしても、社長を中心とする経営層がプレイングマネージャーである場合は、そもそも相談に必要な材料を整理する余裕すらなく、最適なサービスの選択の仕方もわからないといった状況であることも多いのです。
IT活用が不十分だと認識しながらも、対応策がわからない
――中堅中小企業が直面する様々な課題の解消に向け、以前から情報システムの活用が不可欠だといわれてきましたが、実際にはあまり進んでないようです。その理由はどこにあるのでしょうか。
柳田氏:まず挙げられるのが、要員がいないという問題でしょう。情報システムの導入自体は、ほとんどの中堅中小企業にも浸透してきていますが、その管理となると、総務や経理の担当者が本来の業務と兼務する形で対応しています。そうした状況では、新たなシステムを導入したり、現行システムを強化するといったことまで手が回りません。またITの活用自体についても、「財務諸表を出さなければならないから会計パッケージを利用している」といった具合に、あくまでも目先の必要性に迫られてのものにとどまっています。ITで管理されている様々な数値を吸い上げて、昨日までの売上がどうなっているかを見たり、1カ月ではなく毎週営業判断を行ったり、あるいは「今月のキャッシュフローはまずそうだ」と事前に判断できるような中堅中小企業は、まだまだ少数派のようです。
松本氏:ITは便利なだけでなく、うまく活用することによって、新たなビジネスや新たな取引先を獲得するための強い武器になったり、データを分析して課題を抽出すれば、経営改革を実現することもできるということを、もっともっと知っていただきたいですね。
横川氏:中堅中小企業の経営者に接してよく耳にするのは、自分たちのIT活用のあり方やシステム自体がすでに陳腐化しているのはわかってはいるけれど、このままシステムを“塩漬け”にして使い続けるのか、どこかで踏ん切りをつけて、クラウドなど新たなIT活用環境へと移行するのかといった点も含め、どうすべきかがわからないという声です。例えば、Eコマースにチャレンジはするが、いざそういうチャネルを使おうとすると、自分たちの商品のカタログ1つとってもそれを整理できないとか、在庫情報を載せようとしても10年、20年使っている在庫管理のツールから、どうやってデータを持って行けばいいのかになると、もうお手上げで、結局、手入力になってしまう。そういうことをやって儲かるかどうかもわからないから、なかなか投資もできないわけです。また、仮にそうしたことをベンダーやコンサルに相談しようとしても、技術の話になるととたんに難しくなってしまう。また、システムや相談に高い費用を取られるのではないかという不安もつきまといます。そこで、多くの中堅中小企業の経営者は、安心してそうした相談に乗ってもらえる相手が欲しいと考えているのです。
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