情報通信研究機構(NICT)は3月19日、KDDI研究所(KDDI研)と、災害時に素早く"暫定光ネットワーク"を構築するために、製造ベンダが異なる光通信装置を統合的に制御管理するシステムを開発し、光パスの設計・制御の実証実験を行ったと発表した。

今回の実証実験の背景として、一般に、光通信機器は、それぞれ、製造ベンダが独自に研究開発したオリジナル製品であるため、通信事業者は、同一ベンダの装置群で構築された複数ネットワークを個々に運用しており、製造ベンダが異なる装置を用いて、暫定ネットワークを構築することは、実質的に不可能とされていた点があった。

このことを解消するために、今回、NICTとKDDI研が開発したシステムが、実際のユースケースを検討し、製造ベンダが異なる光ネットワーク装置を協調動作させて、暫定光ネットワークを構築する「ネットワーク統合制御管理システム」となる。

ネットワーク統合制御管理システムを利用した災害時応急復旧方法

同システムの開発にあたり、NICTは、光パス設計、光パス制御を行う「統合制御管理部」、統合制御管理部からの命令を各ベンダ(A、B)装置の命令に変換する「ミドルウェア」及び「ベンダA装置制御部」を、KDDI研は、「ベンダB装置制御部」を開発した。

ネットワーク統合制御管理システムによる災害復旧実証実験では、切断箇所を迂回するために、緊急用の光ファイバを手動で接続し、ベンダA装置光ネットワークとベンダB装置光ネットワークにまたがる光パスを設定。パスの設定は、保守者が統合制御管理部の画面上で行い、統合制御管理部からの命令を受けた各ベンダ装置制御部が、変換ミドルウェアを利用し、それぞれのベンダ装置を制御し、光信号でコンテンツを配信した。

今回行った実証実験

同社によると、同技術が実用化されれば、災害で設備が損壊した場合でも、損壊を免れた地域の設備を利用して暫定的な光ネットワークの構築が簡単になり、通信の早期復旧に貢献できるとしている。

なお、同成果は、総務省平成23年度補正予算「情報通信ネットワークの耐災害性強化のための研究開発」にて開発された。