海洋研究開発機構は、水深11,000メートルまでの深海海底に設置可能な“超深海型”の海底地震計を開発し、宮城県沖の日本海溝海域で性能通りの観測データを得たことを発表した。これまでの海底地震計は、耐圧性能の問題から、水深6,000メートルより深い海底では観測できなかった。今後は、地球上の全ての海域で観測が可能になるという。
海底地震計は、球型の耐圧容器に地震計や記録装置、電池を封入した装置で、その外部に設置・回収時に必要な各種機器を取り付けている。海底に設置する時は、重り(シンカー)を利用して海上から自由落下させ、着底させる。回収時は音響信号によりシンカーを切り離し、容器を浮上させて船で回収する。回収した観測データは、海底下で発生する地震の震源位置の決定や発生メカニズムの解析に活用される。また、研究船のエアガンから発せられた人工地震波を記録して、海底下の地殻構造を観測することにも利用されている。
同機構は京セラ(本社・京都市)と共同で、これまでのガラス製耐圧容器に代わる、セラミックス製の容器(外径約44センチ)を開発し、水深11,000メートル相当の水圧に耐えられる“超深海型”海底地震計(全重量98キログラム)を開発した。また、日本海洋事業(本社・神奈川県横須賀市)と共同で、従来の海底地震計よりも小型のガラス球耐圧容器(外径約33センチ、耐圧水深7,000メートル)を開発し、外部機器も内蔵するなどして、従来の約3分の1の重量(同35キログラム)の“大規模展開型”海底地震計も開発した。
今回開発した2種類の海底地震計を昨年12月10日から1月 18日まで、深海調査研究船「かいれい」によって日本海溝に設置して地震観測を行い、さらに人工地震波を利用して地殻構造を探査した。その後、海底地震計を回収したところ、データは問題なく収録できていることが確認された。
これらの海底地震計は、水深6,000メートル以上もある日本海溝だけでなく、それよりも比較的浅い南海トラフ沿いで発生が懸念される東海・東南海・南海地震の震源域においても、既存の地震計よりも効率的に運用することができるという。
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