日立製作所(以下、日立)は3月14日、国や都市によって異なる旅客の移動ニーズに即した運行管理システムの構築を支援する旅客流動シミュレータを開発したと発表した。
日立は、道路交通の分野で培った経路探索技術や統計渋滞予測技術の知見を活用し、ダイヤに則って運行する列車と、一見バラバラに見えるが、所要時間や乗換え回数などを合理的に選択し、自律的に行動する旅客の移動が相互に与える影響をモデル化。
このモデルを、膨大な人やものが共存する状況を解析できるマルチエージェント・シミュレーション技術へ適用することにより、列車数万本規模の複数路線の列車運行を再現し、これらの列車運行に合わせて数千万人規模の旅客が移動する状況を秒刻みで推定することができる旅客流動シミュレータを開発した。
本シミュレーションは、従来評価することが難しかった列車単位での乗車率や乗降人数を網羅的に評価することができるため、信号機故障や車両故障などによる突発的な輸送障害が旅客の移動に及ぼす影響や、大型商業施設の開業やイベントの開催などによる旅客の移動ニーズの変化が列車運行に及ぼす影響などが検証できる。
また、一日分の旅客の移動を数分で推定し、列車と旅客の移動状況を地図上にアニメーションで表示させることができ、地図上の駅や列車などを選択することで、それぞれを利用する旅客の混雑状況や行先の内訳を表示させることもできる。
本シミュレータには、旅客の移動ニーズの変化に対して、一部の列車の出発時刻を最適化することで、列車の乗車率を平準化する機能があり、先発する列車の乗車率が後発する列車より小さいとき、先発する列車の乗車人数が増えるように出発時刻を少し遅らせ、これを順次適用することで、乗車率のばらつきを平準化する。これにより、列車の本数はそのままに、列車遅延の原因とされる混雑による乗降時間の短縮が期待でき、安全で正確な列車の運行管理を支援することができる。
さらに、本シミュレータと、2011年9月に開発したエネルギーコストや輸送量を計算することができる鉄道システム統合シミュレータを連携させることで、旅客の移動ニーズの変化に対応し、エネルギーコストと輸送量が最適となる運行を実現する鉄道システムの構築が可能となるという。