Immersionのシニアバイスプレジデントを務めるDennis Sheehan氏

触覚フィードバック技術(ハプティクス技術)の開発、販売を手掛ける米Immersionは3月14日、都内で会見を開き、携帯機器のユーザーインタフェース上で、物理的な存在感や感情、臨場感の伝達を可能にする触感プレゼンスソリューション「Haptic SDK」ならびに統合テーマモジュール「Integrator」を発表した。

同社はハプティクス技術向けソフトウェアに特化した企業で、すでにドライバレベルの組込型ソフトウェア「TouchSense」をスマートフォンなどの携帯機器向けに提供しており、同技術を搭載した製品は累計で5億5000万台以上に達するという。日本でも富士通が提供する「らくらくホンシリーズ」に同技術を採用しているほか、NECやパナソニックも採用しているという。「聴覚や視覚での差別化が難しくなってきている現代、OEM各社は他社との差別化を図る技術として我々の触覚技術を採用している」とImmersionのシニアバイスプレジデントを務めるDennis Sheehan氏は採用が増え続ける背景を説明する。

今回発表された2つの技術も触覚に作用するもので、Haptic SDKはサードパーティのアプリケーション開発者向けに提供されるもの。一方のIntegratorはAndroidデバイスなどのUIに容易に触覚効果を作りこむことを目的としたビルドタイムツールとなっている。

Haptic SDKやIntegraterを用いると、OEM企業は音声、視覚、触感の3つを緊密に統合することが可能となり、さまざまな際にデバイスに感覚を与えることが可能となる。例えば、竹が風に揺れている音と映像は、竹の葉が手の中でかさかさと音を立てる感触を提供することができるようになったり、自動車の動画では、走りに応じた振動などを提供することが可能となるほか、鍵穴に鍵を入れて回す際の物理的な抵抗感やボタンを押す際の機械的な質量などを感じることができるようになるという。「ユーザーはこうした体験から、現実に起こる感覚を疑似的に体感することが可能になる。現実ではこうなるはず、といったイメージを補完してくれたり、リアルな反応から、なにかしらのアクションが発生しているということを理解することが可能となる。そして、そうした機能を体感することにより、より高い価値を無意識のうちに想起するようになる」(同)と、触覚の活用がこれまでとは異なる体験をユーザーにもたらすことができることを強調する。

また、Haptic SDKを利用すると、2つのデバイス間で感触を共有することも可能となる。これにより、例えば自分の画面だけでなく、相手の画面に自分がタッチした痕跡を残したり、相手がなぞった反応を自分側の端末で感じることができるようになることから、同氏は「互いに相手がそこにいるということを強く感じることができるようになる」と説明するほか、「我々が技術として提供するのは、"触感の確認"、"リアリズム"、そして"リッチコミュニケーション"という3つの価値だ。ハプティクス技術により、新しいコミュニケーションを提供することが可能となる。それこそ、音声と映像だけでなく、感情そのものを伝えられるようになる」とする。

Immersionが提供するハプティクス技術を活用することで"触感の確認"、"リアリズム"、"リッチコミュニケーション"といった新たな価値を提供することが可能となるという

なお、これらの技術は既存のTouchSenseを組み合わせた形で活用されることとなり、現在、日本も含めたOEM企業を中心にすでに提案を進めているとのことで、早ければIntegratorは2013年後半に、Haptic SDKは2014年春ごろには活用した何らかの機器が登場する見込みだとしている。

選択したアイコンごとに異なる音と振動を体験できるというデモ

見づらいが、右の人の指が赤い線、左の人の指が青い線をそれぞれ描いており、それが両者のタブレット上に表示されていることが分かる(相手が描いていると、その振動が自分の方に伝わってくる)

それぞれのアイコンを押すと、音とともにそれに近い振動が手に伝わってくる

動画再生デモ。このような場合でも、例えばクルマが走り出す際や加速などに併せて異なる振動を感じることができる