ルネサスエレクトロニクスは3月11日、産業分野や、ビルディングオートメーション向けの32ビットマイコン「RX600」シリーズとして、「RX631/RX63N」グループのラインアップを拡充し、新たに120品種を展開すると発表した。4月よりサンプル出荷を開始する。

高機能・高性能化が進む産業用・OA機器などの分野では、ローカルネットワークによるデータ通信が高度化してきており、一昔前のPCネットワークに匹敵するほどのデータ処理能力に加え、データの秘匿性を高めるための暗号化処理も欠かせなくなってきている。この増大するデータを高速に処理するためには、高速なCPUに加え、高価なSRAMを外付けする必要があった。

同製品は、既存の「RX63N/RX631」グループ製品に比べ、最大2倍にあたる256KBのSRAMを内蔵。 これにより、外付けSRAMを別途用意することなく、少ない部品点数で安価かつ高速なシステムの構築が可能となった。また、AES(Advanced Encryption Standard)標準化暗号方式(128/192/256ビットの鍵長)のハードウェアアクセラレータであるDEU(Data Encryption Unit)機能を内蔵し、高速な暗号処理を実現。さらに、既存の「RX63N/RX631」グループ製品と同様、100MHz駆動で内蔵ROMにノーウエイトのアクセスが可能で、165DMIPSの性能を実現しているほか、ROM部分には、10万回書き換え可能な1~2MBのフラッシュメモリを内蔵している。

これらの特徴に加え、RXプラットフォームの製品コンセプトに基づき、既存製品とピン互換があり、既存製品でシステム構築しているユーザーも、回路変更を行うことなく、容易に新製品への置き換えが可能。新規で採用する場合も、パッケージはLQFP100ピンから176ピンまで豊富なバリエーションを用意しているので、様々な組み込み装置に使用できる。

外部バスでは、既存の「RX63N/RX631」グループと共通のEXDMACを備えており、内部バスがCPUなどに占有されているときでも独立した外部バスを利用してデータの転送が可能。なお、EXDMACを用いれば、専用LCDコントローラがなくてもCPUに負荷をかけることなく、QVGAやWQVGAクラスまでの描画ソリューションを容易に実現できる。

さらに、省電力化に向けては、2Vの低電圧で動作するRTC(リアルタイムクロック)を搭載した。時間キャプチャ機能を備えており、CPUがパワーオフ状態となり動作しないときでも、独立してシステム状況の変化を検知する。また、タイムスタンプ機能も有しているので、この変化がいつ起こったのかを記録し、後で確認することもできる。

周辺機能では、既存の「RX63N/RX631」グループと同様、CAN 2.0Bを最大3チャネル、OTG規格にも準拠したUSB2.0フルスピードを最大2チャネル備えている。特に、豊富なネットワークインタフェースを持つ「RX63N」については、MIIとRMIIに準拠したEthernet MAC IEEE 802.3インタフェースを実装しており、PHYへの接続も容易に行うことができる。

なお、新製品のサンプル価格は未定、量産は2013年12月より開始し、2014年6月には月産6万個を予定している。この他、2MBのフラッシュと128KBのRAMを内蔵した既存の「RX63N」を実装したスタータキット(RSK:ルネサススタータキット)を3月より販売する予定。同製品を利用することで、新「RX63N/RX631」グループ製品の量産前に先行して開発を開始でき、量産後に置き換えることで、開発をスムーズに行えるとしている。開発環境では、フラッシュプログラマとしても機能する低価格のE1エミュレータ(新製品向けは開発中)と、トレース機能やRAMモニタ、その他高度な機能を備えている高機能なE20エミュレータ(新製品向けは開発中)という2種類のハードウエアエミュレータを提供している。