Integrated Device Technology(IDT)は3月4日、都内で会見を開き、同社が注力するワイヤレス給電市場の現状ならびに同社の戦略について説明を行った。
IDTのVice President,Coporate MarketingであるGraham Robertson氏 |
同社Vice President,Coporate MarketingであるGraham Robertson氏は、「IDTは、クラウド、4G/ワイヤレス基地局、そしてモビリティの3分野を注力市場としており、タイミング製品のほか、DRAMモジュール用バッファやPLL、PCI Express対応スイッチ、フラッシュメモリコントローラ、そしてコンシューマモビリティ向けにワイヤレス給電製品などを提供している。中でもワイヤレスネットワークはさまざまなところで普及しているが、それぞれの機器で充電規格が異なっていたり、ACアダプタが必要となっており、それらを持ち運ぶのは避けたいというニーズが強くなっており、置くだけで充電できるワイヤレス給電が街中のいたるところにあれば良いのに、というニーズが高まっている」と説明する。
ワイヤレス給電方式には電磁誘導方式(MI)と磁界共鳴方式(MR)の2種類があるが、「IDTは中立的なデバイスベンダとして、どちらが良いというつもりはなく、カスタマの要望に応じた製品を双方に提供していく立場である」とし、「MI方式でもWireless Power Consortium(WPC)が推進するQiやPMA(Power Matters Alliance)の規格が存在しており、どちらの規格しかサポートできないのではないか、という懸念を機器メーカーがもっている。しかし、我々は、どちらの規格も1チップでサポートしており、市場がどちらを選んだとしても、サポートできなくなるということはない。また、MR方式を推進するAlliance for Wireless Power(A4WP)もサポートしており、どの方式のどの規格が最終的に選択されても、IDTを選択してくれたカスタマがその規格から外れることがないような取り組みを進めている」と企業としてのスタンスだけでなく、製品としてもQiとPMAの両方に対応可能な製品を供給するなど、特定の団体や規格に肩入れしておらず、広く各種規格団体と付き合うことで、すべてと平等な付き合いを行っていることを強調する。
ワイヤレス給電にはMI方式とMR方式があり、複数の規格が存在しているが、IDTはそれらのすべてと平等に付き合うことで、マーケットが最終的にどの規格を選択しても、ユーザーに不便をかけずに済むようなマルチ対応の製品開発などを進めている |
MI方式とMR方式の特長比較。MI方式は送受信双方のコイルが合わさらなければ給電ができない代わりに給電できる容量を大きくしやすいという特長がある。一方のMR方式はコイルを合わせる必要がなく、周辺に置くだけで給電が可能となるほか、複数台数への給電もしやすいが、代わりに給電できる容量が少ない |
また、そうした平等な立場を活用することで、各規格団体以外にも、「通信キャリアや端末ベンダなどと直接、将来に向けた使い勝手の話し合いを行っている」とのことで、「卵が先か鶏が先か(インフラを整備するのが先か、対応機器が普及するのが先か)の問題になるが、そうした各企業からのニーズを鑑みると、おそらく対応機器が先に普及して、それをインフラが追随することでさまざまな場所でワイヤレス給電を活用することが可能になると思える」とし、2013年後半には世界的に普及に向けた大きな動きが見えてくる気配があるとするほか、2015年以降はMI方式のみならずMR方式を採用する機器なども普及してくることが期待されるとしており、ソフトハウスやPCメーカーなどとも協力して、市場を盛り上げていきたいとした。
特にMI方式向けにはカスタマが使いやすい形にしたリファレンスをすでに提供しており、開発の容易化を実現しているほか、受動部品を取り込んだ1チップソリューションなども用意しており、さまざまな規格への対応と高い性能を幅広い用途に向けて提供しているとする。また、日本のメーカーとも協力してワイヤレス給電ソリューションの開発も進めているとするほか、自動車分野に向けた評価ボードの提供も進めている段階にあるとしており、ワイヤレス給電に興味を持つ企業は我々にアクセスしてもらえれば、必要とする市場の動きと対応製品の両方を提供することができるとしており、今後も中立的な立場を貫く形でワイヤレス給電の普及に向けた取り組みを進めていくとする。
なお、同社ではQi規格対応の15W品を2013年の下期に発表する予定のほか、45W品の開発も進めており、より大容量の電力への対応してもらいたいというニーズも強いことから、規格策定団体であるWPCの動きに合わせて、最適なタイミングで対応していきたいとしている。