Texas Instruments(TI)は、従来、数週間~数カ月かかっていたモータ制御システムの調整を短期間で終えることが可能となる技術「InstaSPIN-FOC(フィールド・オリエンテッド制御)」ソリューションを発表した。
センサレスFOCモータ技術は、多くのシステム上の利点を持つ一方、多くの業界でモータ制御システムに関する知識を必要とすることから採用が遅れていた。今回発表された技術は、モータ制御の経験の少ない技術者でも、システムの複雑さを緩和することで開発のしやすさを提供すると同時に、多様な速度および負荷があるモータアプリケーションにおいても、モータの効率、性能および信頼性を向上させることができる技術になっているという。
特に従来のFOCモータの設計では、機械式の回転センサを使用する場合、センサ、電源、特殊な配線およびコネクタ、実装および保守などのシステムコストを増加させるとともに、過酷な環境における性能の低下の他、電気ノイズ、温度および湿度などによって、信頼性が低下する恐れがあった。また、密閉されたコンプレッサや大型の牽引機器など多くのアプリケーションで、センサを実用的に使用することができなかった。これに対し、同技術を用いることで、三相、同期または非同期型の各種モータの同定、調整、および様々な速度および負荷に対し、思い通りの制御を、5分以内で実現できるようになるという。
さらに、モータの機械式な回転センサが不要となり、システムコストの削減に役立つ他、同社の32ビットPiccoloマイコン「C2000」のROM内に組み込まれた、磁束、角度、速度およびトルクを計測する新たなソフトウェアエンコーダ(センサレスオブザーバ)アルゴリズム「FAST」によって、動作を向上させる。「InstaSPIN-FOC」は、先般発表された「InstaSPIN-BLDC」テクノロジに加え、さらに容易かつ効率的にモータ制御の開発を実現する新バージョンの「InstaSPIN」ソリューションも発表される予定という。
加えて、オプションで、運転中の抵抗の再較正モードにより、最も過酷な使用環境においても変化に追従した堅牢なオブザーバ性能を提供する。また、複数の起動モードを搭載し、制御周期1サイクル未満でオブザーバが角度に追従し、その他のセンサレス技術の起動時の問題を解決する。さらに、1Hz未満の低速回転の定常回転において、角度の精度を保ち、フルトルク、ゼロ速度を通過した反転動作および、ストール状態からの滑らかな回復などを実現するという。
なお、「InstaSPIN-FOC」に対応した、90MHz動作、32ビットPiccoloマイコン「F2806xF」を出荷中。価格は1万個受注時で6.12ドル。今後、「InstaSPIN-FOC」は、その他の数種類のPiccoloマイコン製品でも供給される予定。最新の「InstaSPIN-FOC」によるモータ設計を迅速に開始できる低電圧、低電流モータ制御キット「DRV8312-69M-KIT」は299ドル、低電圧、高電流モータ制御キット「DRV8301-69M-KIT」は299ドル、高電圧モータ制御キット「TMDSHVMTRINSPIN」は699ドル。すでにTIのモータ制御開発キットを購入済みのユーザーは、「InstaSPIN-FOC」対応のPiccolo controlCARD「TMDSCNCD28069MISO」を同99ドルで販売している。