ITホールディングスグループの国内大手SIerであるTISは、「TECHMONOS」(テクモノス)という独自ブランドを展開し、マーケティング領域におけるソリューションを提供している。広告代理店やコンサルティングファームがIT事業に参入している例は今にはじまった話ではないが、SIerならではのマーケティングビジネスには、どのような新規性や独自性があるのだろうか。ここでは同社産業事業本部 ネットコミュニケーション事業部 ネットソリューション部 プロモーション担当 吉原敬史氏に話を聞いた。
変動激しい顧客ニーズに対応するため企業の利益をワンストップでサポート
SIerとして大手企業のECサイトや決済システム、業務管理システム、ポイント管理システムなどを構築してきたTISは、消費者のニーズや購買方法、デジタル環境が大きく変わっていることに、業容拡大の必要性を感じた。
「昨日ほしかったものが、今日もほしいとは限らない」
消費者の動向の変化こそが、消費に大きな影響を与えると吉原氏は確信したという。そこで同社では、「企業の利益拡大をワンストップで支援」するため、さまざまな業種・業態に対応した既存の事業部門に対し、横断的に連携する部署として「ネットソリューション部」を新たに設置。社員約6900名の中から、各分野の専門家を集め、またアドビ システムズやSASなどとパートナーシップを組み、ソリューション群「TECHMONOS」の展開を開始した。
TECHMONOSでオンライン・オフラインの領域をカバーし「今」をとらえる
「テクモノス」はTech(Technology)+クモの巣(Net)というネーミングのとおり、ECサイトや店舗での購買データ、顧客情報などを多面的に分析し、導入企業に対し課題の抽出や情報の一元化、販促ツールの提案・構築を行うビジネスモデルだ。大きくは、次の3つのソリューションにて構成される。
【1】TECHMONOS EC+
エンドユーザーの属性や購買データを分析し、お客様に優良なECサイトの構築を迅速に行うことで最適なサービス・アジャイルを実現する。
【2】TECHMONOS Mobile+
直感的なユーザーインタフェースを実現し、販売・接客スタッフの業務を円滑化。社内システムと連携させることで情報の分析・収集・反映を迅速化する。
【3】TECHMONOS Intelligence+
オンラインで集約された情報と実際の購買行動、顧客情報を一元化(Online to Offline)し、収益効率を最適化する。
サービスアジャイルの視点で生まれた「TECHMONOS EC+」
同社では、会員向けの大規模ECサイトなどをスクラッチ開発してきた経験により、さまざまなオープンソース技術の活用、検索エンジンとの連携方法などのノウハウを蓄積してきた。そのため、顧客の動向や商材の変化にあわせてすぐにECサイトを構築・改修できる体制と手段を有する。また、CMS(Content Management System)を採用し、導入企業の担当者が直接サイトを更新することで、より迅速な情報提供やエンドユーザー対応を可能とした。
「ECサイトはシステムではなく、エンドユーザーの視点にたって迅速に変動させる必要がある」
吉原氏は、「サービスアジャイル」の視点にたったECサイトのあり方を強調した。
操作性の高いUIでB to Bでの引き合い多数の「TECHMONOS Mobile+」
エンドユーザーには圧倒的に普及したモバイルだが、B to Bではセキュリティ等の観点から未だに利用が進んでいないのが現状だ。しかし、信頼性さえクリアできれば、その有効性は説明するまでもないだろう。
同社では、これまでエンドユーザー向けの決済やポイント管理をモバイルで提供してきた実績を生かし、懸念点とされるセキュリティへの課題を一つひとつクリアにしてきた。そうして、B to Bでのモバイル活用を実現。その一例が、販売スタッフによる活用だ。すでに本ソリューションを導入した飲料メーカーでは、販売管理用の専用端末をiPadに切り替え、スタッフが販売個数をリアルタイムで報告できるようにした。飲料メーカーが「TECHMONOS Mobile+」を採用した理由は、その操作性にあるという。
これまでの端末上では、文字情報としての商品名を選び、表計算ソフトのようなフォームに販売点数を入力してきた。しかし、「TECHMONOS Mobile+」では、自動販売機でジュースを選ぶように、実際の画像を見ながら直感的に商品を選ぶことができる。このまるで「カタログ」のようなUIについては、ソフトバンクモバイルと連携し、その分野に長けたソフトハウスから応募いただくコンテスト形式を採用。その中から最適なデザインを選ぶ手法を始めた。「セキュリティ」と「直感的な操作性」へのこだわりから、B to Bでのモバイル活用は近い将来、標準化することになりそうだ。
オンライン・オフラインのデータを統合分析する「TECHMONOS Intelligence+」
SIerがマーケティング領域で最大の強みを発揮するのは、ECサイトやモバイル、業務管理システムなどから集約されたデータをマーケティング・データベースとして一元化し、各フロントチャネルやバックオフィスを最適化できる点にある。とかく盲点になりがちなのは、店舗やネット通販、直接販売などコンタクトポイントを統括する部署が、それぞれの定義で顧客データを管理していることだ。しかし、今日の購買傾向を鑑みると、1人のエンドユーザーがさまざまな購買方法を選択している。全社横断的に「どの販売方法を強化し、あるいは見直すか」という観点で顧客データを相互活用していく必要が生じてきた。
そこで同社では、アドビ システムズのマルチチャネル分析ツール「Adobe Insight」と連携し、TECHMONOS Intelligence+を確立した。
このソリューションでは、店舗で管理している顧客情報やECサイトの顧客情報、売上に関するデータなど、マルチチャネルのデータを統合化し、コールセンターによるフォローなどにつなげることができる。また、ユーザーの行動や位置情報をもとに、店舗の前を通った際に、スマートフォンのプッシュ機能で情報を提供することも可能だ。
すでにこのソリューションを導入している金融機関では、解約者のデータと属性、預け金の額などを分析し、一定の属性に対してフォローを行っているとのことだ。
このように「TECHMONOS」では、統合的な分析結果に基づき、全社的にPDCAサイクルを適用できるしくみ(基盤)が構築される。近々開催されるセミナーでは、具体的な活用事例が報告される予定だ。ぜひ足を運び自社での活用イメージをつかんでいただきたい。
○「Mobile+」
モバイルセミナー「ビジネスを動かすのも、指一本!」
~スマホ・タブレットとバックオフィスを連携する、一歩進んだケーススタディ~
日時: 3月4日(月) 場所: IBMイノベーション・センター(渋谷マークシティ·ウェスト)
申し込み:http://www.tis.co.jp/seminar/20130304.html
○「Intelligence+,EC+」
O2O/マルチチャネル・マーケティングセミナー
~“個客”購買行動の360°包囲網を実現する~
日時: 3月14日(木) 場所: 秋葉原UDX NEXT-1
申し込み:http://www.tis.co.jp/seminar/20130314.html