各分野の専門家の方にお勧めの書籍を紹介していただいている本企画。今回は、ソフトウェアプロセスエンジニアリングの岡大勝さんにプロジェクトマネジメントに関する書籍を紹介していただきました。PMBOKやWBSといったプロジェクトマネージャーにおなじみの書籍はあえて外し、業務分析やアーキテクチャ設計などプロジェクトマネジメントに広がりや深みを持たせるための書籍を選んでいます。ぜひ参考にしてください。
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プロフィール
岡大勝氏 (OKA Hiromasa)
ソフトウェアプロセスエンジニアリング株式会社(SPEI)、ITアーキテクト兼CEO。1972年生まれのA型。DEC、HP時代は金融エンジニアとして業務システムと格闘し、RationalではRUP・UML・オブジェクト指向の普及に努めてきた。2003年にSPEIを設立後は、アーキテクチャと開発プロセスの視点から「ちょうどいいシステム、ちょうどいい進め方」を模索している。著書に『「要求」の基本原則』(技術評論社刊)、『本当に使える開発プロセス』(日経BP社刊)がある。PMI認定PMP。
『ビジネスアナリシス知識体系ガイド』 |
『ビジネスアナリシス知識体系ガイド』
―― 監訳:IIBA日本支部BABOK翻訳プロジェクト、発行:IIBA日本支部
本書はIIBAという非営利団体の定義した業務分析手法の知識体系であるBABOK(A Guide to the Business Analysis Body of Knowledge)の解説書です。業務システムの開発プロジェクトでは、業務分析からシステムスコープ定義、そして要件定義へと曖昧さを扱う作業が続きます。本書では、お客様の業務を扱う際の観点や行うべき作業手順などがチェックリストとともに規定されています。プロジェクトマネージャーにとってはPMBOKがお馴染みですが、BABOKはスコープマネジメントのインプットである業務や要求を扱うための知識体系として、業務システムに関わるプロジェクトマネージャーの書棚に置いておきたい一冊です。
『アーキテクチャ中心設計手法』 |
『アーキテクチャ中心設計手法』
――著者:アンソニー・J・ラタンゼ、発行:翔泳社
一般的な開発プロジェクトでは、要求定義の結果から設計・実装工程のWBS(Work Breakdown Structure)を作ります。しかし設計は要求定義の続きではありません。単純に要求定義した結果から設計・実装を計画してしまうと、ほとんどのプロジェクトは失敗します。プロジェクトマネージャーの作ったWBSは、設計者の側から見るとその中には無理な計画が含まれていることが往々にしてあるからです。本書では、要求からアーキテクチャドライバー(リスクの高い要求や重要な要求)の識別、リスクへの対処や実現方式の検討と検証など、設計工程を計画する際の示唆を与えてくれます。要求と設計の間には、開発と管理の基盤としてのアーキテクチャが存在します。システムの開発計画を策定する際、アーキテクチャの観点で視野を広げてくれる一冊です。
『アジャイルソフトウェアエンジニアリング』 |
『アジャイルソフトウェアエンジニアリング』
――著者:Sam Guckenheimer、Neno Loje、発行:日経BP社
システム開発にはツールによって自動化できる作業がたくさんあります。テストやCI(継続的インテグレーション)がその代表格でしょう。本書はアジャイル開発、中でもスクラムをベースにしていますが、例えばテストを自動化すべきモジュールの識別方法など、ウォーターフォール開発にも適用できるプラクティスの事例集として活用できる書籍です。本書ではVisual StudioとTeam Foundation Serverを使った適用例が挙げられていますが、ツールによる自動化は、プロジェクト改善の良いきっかけになります。またアジャイル開発が気になっている方は、本書にあるようなツールを入り口として挑戦してみてはいかがでしょう。
『Making Software エビデンスが変えるソフトウェア開発』 |
『Making Software エビデンスが変えるソフトウェア開発』
――著者:Andy Oram、Greg Wilson、発行:オライリージャパン
会社の先輩からプロジェクト管理を教えてもらったけれど、本当にそのやり方で正しいのか疑問を抱いている人は多いはずです。本書では、例えば発生する手戻りを最小化するにはどのくらいの期間を事前準備にあてればよいのか、テスト駆動開発やペアプログラミングはどのくらい効果があるのかなど、実際の測定に基づく定量的数値を元に解説しています。論文集を書籍化したものなので少し読みにくい面はありますが、例えばコピー&ペーストの善悪やモジュール化の功罪など、業界の定説もテーマとして取り上げられており、目から鱗が落ちること間違いなしです。すでに組織の中で自分なりのスタイルを持っているけれども、今使っている手法への疑問を抱いているプロジェクトマネージャー、さらなる改善を図りたいと感じているプロジェクトマネージャーの参考になる書籍です。
『闘うプログラマー』(上・下刊) |
『闘うプログラマー』
――著者:G.Pascal Zachary、日経BP出版センター
マイクロソフトに引き抜かれたデビッド・カトラー氏がWindows NTを作り上げるまでのドキュメンタリーです。これを読むことで、ハードなプロジェクトを共感をもって疑似体験できます。プロジェクトメンバーが抜けてしまったり、ビル・ゲイツ氏からビジネス上の要求を突きつけられたり、いくつもの困難が待ち受けています。そんなプロジェクトの中で、ビジネスとビジョンと計画とリスクとのトレードオフの間で闘ったプロジェクトリーダー、カトラー氏の軌跡をぜひご覧ください。少し古い本ですが、すべてのプロジェクトマネージャーの方にお勧めします。