トムソン・ロイターは2月26日、知的財産の観点から日本の産業動向について調査・分析した「マーケットリポート:グローバル化の先へ 日本はガラパゴスから抜け出したか」と題したレポートを発表した。
同レポートでは、日本企業のグローバル化を知的財産情報の観点から分析するとともに、半導体製造装置メーカー、DRAM関連メーカー、ワイヤレス給電技術のそれぞれの特許情報を分析し、事業戦略の転換や事業展開の実例を解説している。
今回の調査では、世界の主要市場において中国と韓国の出願特許件数が占める割合が増加しているのに対し、日本の出願特許件数の割合は低下している。また、日本企業の海外への技術供与による受取金額は年々増加しており、技術の輸出で収益をあげるビジネスモデルが確立されていることなどが判明したという。さらに、企業の事業戦略策定において、知的財産情報を効果的に活用することの重要性が明らかになったとしている。
世界の主要市場における出願特許件数を見ると、1996~2009年の間で中国と韓国の合計出願特許件数が占める割合は全体の9%から39%に増加した。一方、日本の出願特許件数は全体の65%から24%に低下している。
日本企業の国際収支の推移を見ると、サービス収支は長期的に増加傾向を示している。中でも、特許などの使用料が主な要素となっていることがわかる(図2)。また、海外への技術供与による受取金額は増加の一途をたどっており(図3)、日本企業は技術の輸出で収益をあげるビジネスモデルを確立している様子がうかがえる。
2001年以降、日本企業が生産した半導体の消費地域はほとんど変化がなく、日本国内が中心となっているのに対し、アメリカ企業の半導体の消費地域はアメリカ国内からアジア・太平洋地域に移行している。アジア・太平洋地域の消費量は3倍に増加した。市場状況の変化にアメリカ企業が素早く対応した様子がわかる(図4)。
また、半導体製造装置メーカー大手の米Applied Materials(AMAT)と東京エレクトロン(TEL)は、それぞれ異なる戦略により今後の成長が見込める太陽電池製造への事業展開を図っており、これに対応する特許マップを作成することで、両社がそれぞれの技術保有状況をもとに、既存のコア技術の応用や、または太陽電池パネル製造装置メーカーを買収することで事業を展開した様子が判明したという(図5)。
このほか、DRAM事業に進出後、早い段階で重点開発分野をLCDや携帯電話関連、通信・伝送システムへシフトすることで飛躍的な成長を遂げた韓国Samsung Electonicsと、DRAM中心の開発を継続し2012年に経営破たんを余儀なくされたエルピーダメモリを、出願特許の技術分類から分析したところ、DRAM関連企業の複数のメーカーの重点開発分野の推移からは、いち早く市場のニーズを掴み、適切に事業転換を図ることの重要性が読み取れたという。
また、注目を集めるワイヤレス給電分野では、中国国内での特許出願件数が、日本やアメリカ、韓国を上回ってトップとなっている。中国国内では、企業からだけではなく大学からの出願が多いことが特徴的で、大学や研究機関でも事業化を視野に入れた研究開発が盛んに行われているという。製品のライフサイクルが短くなる中、新技術を迅速に製品化するための連携が国境や企業・大学などの研究機関の枠を越えて盛んに行われている模様だ。
なお、同社ではこのように、企業が保有する特許を分析することが、現在の技術トレンドだけでなく、事業戦略の展開を推測することにもつながると今回の研究成果についてコメントしている。