科学技術振興機構(JST)は2月20日、2013年3月23日から25日にかけて兵庫県立総合体育館において日本全国の高校生が学校対抗で科学の知識や技能を競い合う「第2回 科学の甲子園全国大会」の出場チーム47校すべてが出揃ったことを発表した。

同大会は各学校の生徒6~8名を1チームとして参加し、科学の知識や技能を複数の競技で競い合うもの。各都道府県で実施された代表選考会に参加した高校の数は556校(国立18校、公立471校、私立67校)、830チームで、参加生徒数は6308人(1年生2041人、2年生4267人)と、前回を上回る規模になったという。

全国大会で出される競技の種類は主に2つ。1つ目が「筆記競技」で、理科、数学、情報の中から知識を問う問題および知識の活用について問う問題が出され、教科や科目については、その枠を超えた複合的な問題も出題されることから、総合的な科学への造詣の深さが求められることとなる。

2つ目は「実技競技」で、理科、数学、情報に関わる実験、実習、考察ならびに科学技術を総合的に活用して、ものづくりの能力、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力などにより課題を解決する力を競うというもの。前回大会では実験競技が2問、総合競技が2問の4問構成であったが、今大会では実験、総合といった垣根が取り外され、実技競技4問という扱いとなっている。また、前回大会では4種目中1種目(クリップモーターカー・フォーミュラー1)だけが事前公開競技として、あらかじめ参加チームに仕様を公開し、大会までに実験などを行う機会が与えられていたが、今回も前回同様クリップモーターカー(仕様が一部変更された改訂版となっている)が公開競技として各チームに仕様が伝えられている。

また今回はもう1問、前回大会では同時期に開催されていた春の高校野球に併せて、25cm角の段ボールを材料に、「甲子園の土」に見立てたカラーサンドをできるだけ多く詰め込める容器を作製し、その詰め込んだカラーサンドの質量で順位を競う、その名も「甲子園の土」と題されたご当地課題が出されたが、今回もご当地問題は健在で、「灘の酒」と題された実技競技が事前公開競技に指定されており、合計2つの競技を大会前から各チームは研究することが可能となっている。

この灘の酒だが、「市販の乾燥酵母(パン酵母)と糖(ショ糖)を用いて、制限時間内でアルコール発酵の実験を行い、発酵により発生したCO2、ならびに生成されたエタノールの量と実験に対する考察力を競う」というもので、持ち込めるのは事前に配布された実験ノートのみ。そのノートの内容や実験結果、レポートの内容などを総合的に評価する形で採点されるものになるという。

事前公開されている実技競技「灘の酒」の概要

事前公開されている実技競技「クリップモーターカー・フォーミュラー1(改訂版)」の概要

科学の甲子園推進委員会委員長の伊藤卓氏

競技の構成と配点は、筆記が1競技で制限時間120分間で11問(30点が10問、60点が1問の360点)を6名で解答していく形は前回大会と変わらず。また、4つの実技競技は1競技3名制で、各180点、5つの競技で合計1080点というかたちになっている。第1回大会では優勝した埼玉県立浦和高等学校でさえも合計で701点というものであったが、今回の大会について科学の甲子園推進委員会委員長の伊藤卓氏は、「目安となる点数を決めて作っているわけではないので、どのラインが、ということは言いづらい。しかし、才能ある高校生達だからこその高得点を期待したい」とコメントしている。

なお出場が決定した高校のうち17校が初出場で、20校が前回に続く2度目となっている。出場高校は以下の通り。

都道府県名 学校名 出場回数
北海道 北海道札幌西高等学校 初出場
青森県 青森県立三本木高等学校 初出場
岩手県 岩手県立盛岡第一高等学校 2回目
宮城県 宮城県仙台第二高等学校 初出場
秋田県 秋田県立秋田高等学校 2回目
山形県 山形県立山形東高等学校 2回目
福島県 福島県立安積高等学校 初出場
茨城県 茨城県立土浦第一高等学校 2回目
栃木県 栃木県立宇都宮高等学校 2回目
群馬県 群馬県立高崎女子高等学校 初出場
埼玉県 埼玉県立大宮高等学校 初出場
千葉県 千葉県立東葛飾高等学校 初出場
東京都 筑波大学附属駒場高等学校 2回目
神奈川県 栄光学園高等学校 2回目
新潟県 新潟県立新潟高等学校 2回目
富山県 富山県立富山高等学校 2回目
石川県 石川県立金沢泉丘高等学校 2回目
福井県 福井県立藤島高等学校 2回目
山梨県 駿台甲府高等学校 初出場
長野県 長野県長野高等学校 初出場
岐阜県 岐阜県立岐阜高等学校 2回目
静岡県 静岡県立磐田南高等学校 初出場
愛知県 愛知県立岡崎高等学校 2回目
三重県 三重県立伊勢高等学校 2回目
滋賀県 滋賀県立膳所高等学校 2回目
京都府 京都市立堀川高等学校 2回目
大阪府 大阪府立北野高等学校 2回目
兵庫県 灘高等学校 初出場
奈良県 西大和学園高等学校 2回目
和歌山県 和歌山県立桐蔭高等学校 2回目
鳥取県 鳥取県立鳥取西高等学校 2回目
島根県 島根県立松江北高等学校 初出場
岡山県 岡山県立岡山朝日高等学校 2回目
広島県 広島学院高等学校 2回目
山口県 山口県立宇部高等学校 2回目
徳島県 徳島市立高等学校 2回目
香川県 香川県立高松高等学校 初出場>
愛媛県 愛媛県立今治西高等学校 初出場
高知県 高知学芸高等学校 初出場
福岡県 久留米大学附設高等学校 初出場
佐賀県 佐賀県立致遠館高等学校 2回目
長崎県 長崎県立長崎西高等学校 2回目
熊本県 熊本県立第二高等学校 2回目
大分県 大分県立大分上野丘高等学校 初出場
宮崎県 宮崎県立宮崎西高等学校 2回目
鹿児島県 ラ・サール高等学校 2回目
沖縄県 昭和薬科大学附属高等学校 2回目

各都道府県の出場校一覧。オレンジが出場2回目、青が初出場。埼玉県立大宮高校は前回優勝チームであった浦和高校を破っての出場となる

会見にて抱負を語った千葉県立東葛飾高等学校と埼玉県立大宮高等学校のチームメンバー。向かって左半分が東葛飾高校、右半分が大宮高校。大宮高校は、「昨年出場できなかった悔しい思いを晴らしたい」とするほか、「埼玉県の高校が2連覇することを目指す」とした。一方、東葛飾高校からは「1年生と2年生の混成チームであり、チームワークをフルに生かして、十分な成果が出るように頑張りたい」と抱負を語ってくれた