島津製作所は2月18日、新たに開発した独自のバリア放電イオン化検出器(BID)を搭載した高感度ガスクロマトグラフシステム(GC)「Tracera」の販売を開始したことを発表した。

ガスクロマトグラフは、石油化学、ファインケミカル、環境、医薬品、食品、電子/半導体、香料などの分野での研究開発や品質管理目的に使用されているが、近年、ファインケミカル製品における原料中の数ppmレベルの不純物分析や半導体製造用ガスの純度分析といった高感度、微量分析への要求が強くなってきている。

従来のガスクロマトグラフの汎用検出器としては、熱伝導度検出器(TCD)と水素炎イオン化検出器(FID)の2つがあり、TCDはキャリアガス以外のあらゆる無機および有機化合物を検出できるものの感度が不十分、FIDはppm レベルの微量成分を検出できるものの有機化合物(ホルムアルデヒド、ギ酸を除く)しか検出できないという問題点があった。

同製品は、こうした課題の解決を目指して開発されたもの。BIDは、ヘリウムプラズマを発生させ、その光エネルギーにより試料成分をイオン化し、高感度に検出することで、TCDの100倍以上、FIDの2倍以上の高感度となる0.1ppmレベルであらゆる微量成分を検出することが可能だ。

また、BIDのプラズマガスであるHeおよび、He よりイオン化エネルギーの高いNe以外のすべての有機化合物、無機化合物を感度差少なく検出することが可能で、FIDでは感度が低下するアルデヒド/アルコール/ハロゲン類であっても分析感度の向上を図ることができるため、人工光合成の反応過程によって生成されるギ酸などの有機物と水素の分析や、リチウムイオン2次電池内部に発生する無機ガスと低濃度の炭化水素の分析など、従来では複数の検出器や装置を搭載した複雑なシステムを必要と下分析であっても1台で実現することが可能になるという。

さらに、石英管内でプラズマを発生させているため、プラズマ生成のための放電電極とプラズマが接触せず、その結果、検出器の電極の劣化が起こらず、長期的に安定した分析を実現することができると同社では説明している。

なお同製品は309万円から(税別、オートインジェクタ別)となっており、2013年度で160台の販売を目指すとしている。

島津製作所の高感度ガスクロマトグラフシステム「Tracera」