京都大学(京大)は、京都府立大学、ガボン共和国熱帯生態研究所との共同研究により、野生のゴリラから、これまで知られていない新菌種である可能性が高い多数のビフィズス菌「Bifidobacterium sp.」を分離することに成功したと発表した。

成果は、京大 理学研究科の山極寿一教授、京都府立大大学院 生命環境科学研究科の牛田一成教授、同・博士課程3回生の土田さやか氏、ガボン共和国熱帯生態研究所のフィリップ・ベアン研究員らの研究グループによるもの。

ビフィズス菌は、善玉菌の代表格として知られており、人間由来のものの研究が広く進められ、腸内環境を整えるための商品が開発・販売されている。

しかし、これまで野生のゴリラに関するビフィズス菌の存在は知られていなかったという。今回の研究では、ガボン共和国ムカラバ国立公園で実施されている山極プロジェクトにおいて、野生のゴリラから、多数のビフィズス菌を分離することに成功したという(画像1・2)。

これら分離されたビフィズス菌は、いずれもこれまで知られていない新菌種である可能性が高いとのことで、現在、理化学研究所微生物材料開発室の大熊盛也室長と、同・北原真樹博士と連携して、国際細菌命名規約に則り、新菌種として提唱中だという。

これまで、野生や動物園などで飼育されているチンパンジーからビフィズス菌が単離されたことはあったが、いずれも人で存在が知られているものであったという。しかし、今回発見されたビフィズス菌は、大きな分類では、類人猿から見つかるグループに含まれるものの、独立した一系統をなしており、これまでまったく知られていない菌種であり、人類がゴリラ、チンパンジーそれぞれとの共通祖先を経由して進化する過程における最も起源の古いビフィズス菌である可能性があると研究グループでは指摘。今後、類人猿の進化と腸内細菌の進化(共進化)を明らかにするうえで鍵になる可能性があるとしている。

画像1。単離されたBifidobacterium sp.。系統解析などから新種の可能性が高いと思われる

画像2。樹上で、ムメニの実を食べる西ローランドゴリラの母親と赤ん坊