日本電信電話(NTT)は、シルクや合成繊維の表面に導電性高分子をコーティングした電極素材を開発した。これをシャツの下にはり、健常者10人に着てもらって試したところ、心拍や心電図の長時間の計測に成功した。柔軟で通気性のある布の特徴を生かして肌触りがよく、装着者に負担をかけずに長期間の計測・モニタリングが可能だ。医療分野での応用だけでなく、スポーツや健康分野での活用が期待されるという。
発表によると、用いたのは「PEDOT-PSS」※という高分子材料で、導電性が良く環境安定性が優れることから液晶ディスプレイや静電気防止コートなどにも活用されている。NTTの研究所は、この高分子材料をシルクや合成繊維の表面にコーティングし、導電性や柔軟性、生体適合性を保ったままの素材を作製した。 ※PEDOT-PSS :1988年にBayer社(独)が開発した
この素材を生体電極として動物で実験したところ、水分を吸収する親水性があり、従来の医療用電極に近い安定した心電図計測が可能なことを確認した。さらに健常者10人を対象に安全性確認試験を行ったところ、接触性皮膚炎(かぶれ)などは起きず、24時間以上の連続使用でも、安定した心拍や心電図の計測ができた。
今後は100人規模の装着試験を行い、さらに安全性や有効性の検証を行う。また、大学の医学部などと連携して、患者の負担が少ない心電図の長期測定やモニタリング、基礎研究や在宅医療・遠隔医療などへの応用を検討する。
従来の心電図計測で用いられる医療用電極では、電解質ペーストを用いて皮膚に粘着させ計測するため装着感が悪く、日常生活での連続使用にも不向きだった。さらに近年はスポーツ分野で、銀をコーティングした導電性繊維が心拍計測に利用されているが、電解質ペーストを使用しないためにノイズが大きく、医療用途としては困難さがあったという。