文化庁メディア芸術祭実行委員会は、「平成24年度(第16回)文化庁メディア芸術祭受賞作品展」を開催している。会期は2月24日まで、開場時間は10:00~18:00(金曜日は20:00まで)。東京・六本木の国立新美術館をメイン会場に、東京ミッドタウン、シネマート六本木、スーパー・デラックスをサテライト会場として展開する。今回は、会期前に行われた同展内覧会の様子をレポートしていく。

個性的な映像作品が密集していた「アート部門」

同展は、アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門で構成されており、国内外から寄せられた3,503作品の中から選ばれた受賞作品を中心に、審査委員会推薦作品、功労賞受賞者の作品を紹介している。

会場入り口入ってすぐに設置されているのは「アート部門」。今回、最優秀賞を受賞したのは、スイスのCod.Act(Michel DECOSTERD / Andre DECOSTERD)によるミュージックパフォーマンス「Pendulum Choir」。9人のアカペラと18の油圧ジャッキからなる作品で、声楽家たちがジャッキによって前後左右に振り動かされながら合唱する。会場内では映像の上映が行われているが、2月14日 13:30~14:20/ 19:00~19:50には東京ミッドタウン(ガレリア地下1階 アトリウム)にて無料ライブが開催されるので、気になる人は足を運んでみてほしい。

会場内で上映されている最優秀賞作品「Pendulum Choir」の映像(左)、内覧会に出席したCod.Actと合唱隊の面々

このほか、優秀賞受賞作品では、映像作家達が東日本大震災にまつわる映画を同一フォーマットで作成し、ネット上で公開した「BETWEEN YESTERDAY TOMORROW」(SOL CHORD(前田 真二郎/岡澤 理奈))や、1950~60年代の消費主義を象徴する資料映像を加工・ミックスし批判的に編集した「Bye Buy」(Neil BRYANT)などが上映されている。

優秀賞「BETWEEN YESTERDAY TOMORROW」

優秀賞「Bye Buy」

巨大ロボから動くゴミ箱までカバーする「エンターテインメント部門」

エンターテインメント部門の最優秀賞は、テクノポップグループ・Perfumeの世界デビュー記念プロジェクト「Perfume "Global Site Project"」(真鍋大度/MIKIKO/中田ヤスタカ/堀井哲史/木村浩康)。Perfumeのダンスモーションを配布し、一般からそれを用いた作品を募るオープンソース企画など、ユニークで包括的なプロモーションが評価された。

最優秀賞作品「Perfume "Global Site Project"」の展示では、壁に設置したiPadに一般公募した映像作品を、テレビ画面に"公式"が作成した映像を上映している(左)、内覧会で同プロジェクトの作品紹介を行うアーティスト・プログラマーの真鍋大度

優秀賞受賞作品には、ゴミを投げると自ら動いてキャッチしてくれる「勝手に入るゴミ箱」(倉田稔)や、人が乗れる巨大ロボット「水道橋重工「KURATAS」」(倉田光吾郎/吉崎航)、重力が働く方向を自由に決め、あらゆる方向に「落ちる」ことができる、新感覚のアクション・アドベンチャーゲーム「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」など、多様なジャンルから選出された作品が展示されている。

優秀賞「勝手に入るゴミ箱」

優秀賞「水道橋重工「KURATAS」」

普段見られない原画や資料が充実している「マンガ部門」

マンガ部門の最優秀賞は、フランス・ベルギーのコミック「バンド・デシネ」の人気シリーズ「闇の国々」(ブノワ・ペータース/フランソワ・スクイテン、訳:古永 真一/原 正人)が受賞。イラストワークの緻密さやストーリーが世界各所で評価されている同作品が日本語翻訳されたことにより、このたび表彰されるに至った。

最優秀賞作品「闇の国々」の原画や書籍などが多数展示されている

優秀賞作品には日本のマンガが複数選出されており、「GUNSLINGER GIRL」(相田裕)、「ましろのおと」(羅川真里茂)などの原画や設定画が展示されている。

優秀賞作品「GUNSLINGER GIRL」は、作者が自費出版していた同人誌から商業コミックまでを一覧できる

優秀賞作品「ましろのおと」の原画

大友克洋や細田守作品の原画が見られる「アニメーション部門」

アニメーション部門の最優秀賞は、大友克洋監督の短編アニメーション『火要鎮』。江戸の町を襲う大火を舞台としたスペクタクルで、作画のアニメーションの表現と3DCGによる表現を融合させ、斬新な映像表現を実現している。

最優秀賞作品『火要鎮』の映像(左)、原画などの資料も併せて展示されている

優秀賞作品は、細田守監督による劇場アニメーション『おおかみこどもの雨と雪』や短編アニメーション『グレートラビット』など、テーマ性の高い作品がラインナップされている。また、新人賞にはアート性の高い短編アニメーションのほか、テレビアニメーション『LUPIN the Third ~峰不二子という女~』(モンキー・パンチ/山本 沙代)も選ばれ、原画などが展示されている。

優秀賞作品の劇場アニメーション『おおかみこどもの雨と雪』映像(左)と背景画

新人賞作品のテレビアニメーション『LUPIN the Third ~峰不二子という女~』原画

優秀賞作品の短編アニメーション『グレートラビット』

功労賞受賞者の歴代作品も展示

4部門に該当する作品群のほか、音響技術者の佐藤茂氏や編集者の小長井信昌氏、メカニックデザイナーの大河原邦男氏など、功労賞受賞者がこれまでに手がけてきた作品も各所に展示されていた。

「機動戦士ガンダム」に登場するモビルスーツのデザインで知られる功労賞受賞者・大河原邦男氏の作品群

■第16回文化庁メディア芸術祭受賞作品展
会期:2月13日~2月24日
開場時間:10:00~18:00(金曜日は20:00まで)
メイン会場/国立新美術館
サテライト会場/東京ミッドタウン、シネマート六本木、スーパー・デラックス
入場無料