鹿児島大学と北九州産業学術推進機構は2月7日、イカ釣り漁船などの省エネに寄与する高輝度・小型のLED水中照明の開発に成功したと発表した。
同成果は、鹿児島大学 水田敬助教、北九州産業学術推進機構らによるもの。詳細は、2月18日に博多都ホテルにて開催される「NEDO技術開発事業ビジネスマッチング~第113回ベンチャープラザ二月会~」にて研究の成果とそのビジネスプラン(ビジネスモデル)が発表される予定。
スタジアムライトや投光器、水中灯など、大光量照明は様々な分野で使用されているが、エネルギー消費量が高いため、近年のエネルギー事情から、省エネ化が求められるようになってきている。そこで次世代照明として従来型照明に比べて発光効率が高いLEDに期待が集まっている。しかし、大光量LED照明は、光に変換されなかった大量のエネルギーが熱となるため、熱に弱いLEDを用いる場合、故障や短寿命化、発光効率の低下を招くといった問題があった。大光量のLED照明では、LEDの実装間隔を広くし、熱の集中を避けることで、発熱による問題を回避するという手法が一般的であるが、この方法では、LEDを密に配置することができず、LED照明の小型化ができずに、そうした小型ながら大光量が求められる分野での適用が難しかった。
そこで今回の研究では、熱拡散性に優れたフラットヒートパイプの一種であるFGHP(Fine Grid Heat Pipe)をLED実装基板として用いることによってLEDから発生する熱を速やかに拡散させること、筐体内部の排熱経路を最適化して低い熱抵抗で筐体外部への熱の放出を可能とすることで、高性能放熱システムを実現、従来のLED照明が抱えていた発熱による問題を解決することに成功したという。
使用されたモレックス喜入製のフラットヒートパイプは、内部構造を微細エッチング技術で形成しているため、冷媒の蒸発、凝縮、帰還サイクルの最適化が図られているほか、重力の影響が無視できる程度に小さくなるような内部構造を有しているため、既存のフラットヒートパイプで問題となっていた設置姿勢による性能変化がなく、類似品に対する大きなアドバンテージとなるという。
また、放熱システムの開発に加え、対象となる魚種の視感度特性に適したスペクトルをもつLEDを選択することによって、発生した光エネルギーのうち、魚を誘引するために有効なエネルギーの比率を高めることができることを実証し、さらなる省エネルギー化を実現したという。
実際の漁場で、開発したLED水中灯を点灯させ、魚群探知機およびソナーにより魚群の動きについて調べたところ、従来型の4kW程度の白熱灯と170W版の開発品が同程度の魚群コントロール性を実現することが明らかとなり、1/20以下の省エネルギー化が可能なことが判明。これにより、漁業においてライトを点灯させるために必要な燃料を削減できるようになるほか、数時間の漁業であればバッテリーのみの点灯も可能となるため、発電にかかるエンジンへの負荷が低減され、エンジンの故障リスクの低減にもつながることが期待されるとしている。
さらに今回の研究では、ユーザーの利便性と高機能化を図るため、小型内蔵電源も開発された。同電源は、新日本無線製のDSCをベースにした高性能デジタル電源で、LEDに適した高電圧駆動が可能な定電流LED用電源となっている。サイズは60mm3に収まる程度で、外付け電源に比べて約1/9の体積になっているという。加えて、高性能DSCチップのプログラマブル性を活かし、多彩な点灯モードを実現するなど、高機能化も図られており、現在、製品化に向けた信頼性の向上などの開発を進めている段階だとしている。
なお、研究としては現在、数名の漁業者の協力を得る形で、フィールドにおける実効性の検証と改善すべき点の抽出を続けているとのことで、最終的には、高い実効性と信頼性を持ち、さらにユーザーフレンドリーな製品となることを目指し、改善を行っていくとする。また、今回の成果により、集魚灯を用いた漁業の低消費エネルギー化が実現可能であるだけでなく、水中土木作業や海底探査など、従来型LED照明では輝度が不足して導入が難しかった種々の分野についてもLED照明の導入が可能となるため、LED照明のさらなる普及が期待されるとするほか、空中で点灯するためのLED照明についても大光量・高輝度化を実現することを目指し、NEDO「平成24年度 戦略的省エネルギー技術革新プログラム」において、四国計測工業の技術開発テーマの体制に参画し、実用化に向けた開発に協力するなど、技術の他方面への展開を図っていくとしている。