1月23日、日本HPとリバーベッドの共催セミナー「クラウド・仮想化2013 最新ネットワークテクノロジー動向と対策」が開催された。クラウドコンピューティングが普及する中で大きな課題となっているパフォーマンス、管理、可視化にいかに対応するかを語るセミナーだ。
最初に登壇したリバーベッドテクノロジーの代表取締役社長であるティム・グッドウィン氏は、リバーベッドテクノロジーが世界的に多くの企業で採用されている実績を紹介した上で「WANを高速化することはそれほど難しくない。それよりも、WANを超えて通信するアプリケーションを最適化できるかどうかがキーになる。それがリバーベッドの場合は優秀。WANの高速化は上限が決まっているが、アプリケーションを速くすることで帯域幅以上の速度が出せる」と自社の優位性を語った。
接続集中による遅延をリバーベッド製品で解消
次いで登壇したのは、リバーベッドテクノロジー製品の販売を手がけている、日本ヒューレット・パッカードのシニアスペシャリストである今井正樹氏だ。日本ヒューレット・パッカード自身がリバーベッドテクノロジー製品のビッグユーザーでもあり、その性能を実感した上でのソリューション提供だ。
日本ヒューレット・パッカードの事例は、合併を繰り返すうちに世界85拠点に散在していたデータセンターを3カ所に統合するというプロジェクトでの採用だという。大きなコスト削減が実現できたものの、全拠点の社員がアメリカのサーバに接続して利用するため処理の遅延が発生しがちになる。それをリバーベッドテクノロジーの製品により解決、快適な環境で作業できるようになったという。
ネットワーク環境の可視化を実現する「Cascade」
多彩なリバーベッド製品を扱う中で、今回特に取り上げられたのはITパフォーマンスの可視化を実現する「Cascade」だ。テクノロジーの進化、グローバル化、ワークスタイルの変化といったことが進む中、複雑で変化の速いシステムでどのようにパフォーマンスを常に最適化するかを考えた時、「Cascade」が活用できるという。
「Cascade」はネットワーク環境におけるボトルネックの把握や、最適化/非最適化についての調査、例外報告といった機能でパフォーマンス改善・最適化にアプローチする。またネットワーク・トラフィックだけでなくアプリケーションの挙動をポート/プロトコルではなくLayer 7で可視化する。行動分析による実用的な情報提供と包括的なレポートによる状況の可視化を実現する。
「単純な固定しきい値設定だと、ぎりぎりに設定した場合大きな問題ではないのに頻繁にアラートが出てしまう。それを警戒してしきい値を上げると、問題というほどではないがおかしな兆候が出た時に発見できなくなる。それに対してCascadeはビヘイビアモデル上でおかしな動きがあった時にアラートを出したり、オペレーターから問い合わせがあった時にレポートを出したりする。動的に判断できるようになる」と今井氏は語った。
Cascadeによるアプリケーション可視化に加えて、同じくリバーベッドテクノロジーの主力製品であるSteelheadを含むパフォーマンス最適化を実施することで、アプリケーションのパフォーマンスを常に最適化できるという。ヒューレット・パッカードではネットワーク可視化とアプリケーションパフォーマンスの把握を実現する「Cascade Networkアセスメントサービス」を提供。日本国内だけでなく世界160カ国以上でのサポートを提供しているため、海外拠点でのアプリケーション利用を最適化したい場合等にも十分対応できることを今井氏はアピールした。
最後に登壇したのは、リバーベッドテクノロジーのセールスマネージャーである伊藤信氏だ。伊藤氏からは、リバーベッドテクノロジーの各ソリューション活用の簡単な説明に加えて、特に「Steelhead」がWAN越しのアプリケーション利用をいかに高速化するかについて語られた。
「キャッシュ辞書をつくるにあたって1ファイル単位ではなく、100B程度ずつ持つ。そのためどんなプロトコルでも辞書が活用できる、非常に小さい単位で重複をチェックするため重複率が高くなるというのが特徴だ。たとえば4KBで重複排除するリプリケーション装置で72時間かかっていたバックアップの、システムの中にSteelheadを組み込んだところ2時間で終わったというケースもある。それくらいの効果がある」と伊藤氏はその効果を語った。
仮に多くの人数が同じファイルをダウンロードした場合、1人目のみが全容量の通信を行うが、2人目以降はWANごしの通信を行わずSteelheadの辞書から全てを受け取ることになる。さらにファイル名のみが書き換えられた同じファイルを受信する場合には、その変更されたファイル名のみが通信されるというイメージだ。
「たとえばプレゼンテーションの中身は違っていても、テンプレートで使っている色の部分は共通している。そういう部分も重複排除する。ユニークな社員ばかりで全く違うファイルをダウンロードしているならば効果は薄いが、業務によって部署内で同じようなデータを多くの社員が使う場合には効果的。ネットワークの圧迫を避けるだけでなく、ダウンロード時間も短縮できるため従業員の生産性向上にも貢献する」と伊藤氏は語った。
この技術はデータセンターとの通信ではもちろん、パブリッククラウドの利用でも活きてくる。リプリケーションにも活用でき、モバイルワーカーにとっても快適な環境を作り出す。あらゆる環境で活用できるのがポイントだ。
セミナーの最後には多彩な導入事例や具体的な活用方法も紹介された。単純にアプリケーション利用が快適になるというだけでなく、それによる業務効率化、生産性向上、収益の向上といった効果についても語られ、クラウド活用が推進される中で企業が採用すべき技術が提示されるセミナーとなった。