名古屋大学(名大)は、九州大学、米ジョンズ・ホプキンス大学、米海洋大気庁(NOAA)、米カリフォルニア大学、米サウスウェスト研究所との共同研究により、北海道で観測された低緯度オーロラの源が、地球に近い宇宙空間(ジオスペース)での磁気嵐の開始直後の急激な粒子加速に起因していることを明らかにしたと発表した。

成果は、名大 太陽地球環境研究所の塩川和夫教授らが参加する国際共同研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、1月31日付けで米国地球物理学会誌「Journal of Geophysical Research」に掲載された。

従来、低緯度オーロラは、磁気嵐が発達するにつれ、通常の高緯度地域から徐々に北海道付近まで広がってきていると考えられていたが、太陽地球環境研究所では、これまでの20例以上の北海道での低緯度オーロラの観測から、磁気嵐が開始してから1.5時間という短時間で出現している例を数例見つけており、そうした謎の解明を目指して、今回の研究が進められた。

今回、研究グループは、2001年10月21日の磁気嵐開始直後に北海道陸別町銀河の森天文台(太陽地球環境研究所陸別観測所)で観測された特異な低緯度オーロラの原因を調査。具体的には、米国NASAがジョンズ・ホプキンス大学、カリフォルニア大学、サウスウェスト研究所などと共同で開発した人工衛星「IMAGE」によるジオスペースのプラズマ粒子の同時観測データなどを活用する形で実施された。

画像1が、銀河の森天文台でその低緯度オーロラを魚眼レンズで撮影した連続画像。上が北、左が東(空を撮影する時は東西が逆転する)を示している。オーロラの波長630nmの赤い光の強度が白黒で表されている(時刻はグリニッジ標準時(UT)であり、日本時間はそれぞれ9時間を加算する必要がある)。

画像3が、IMAGEが2001年10月21日に観測した23~37KeVの高エネルギー水素のフラックス量の時間変化。低緯度オーロラが観測された日本の経度における値だが、同時にIMAGEが観測した観測した18時18分(UT)と19時19分(UT)におけるプラズマ圏の外側境界の位置と、北海道で観測されたオーロラの磁気圏側の推定位置も示されたものとなっている。

これらの調査から、地球半径の2倍程度とかなり近い宇宙空間で急激に数10KeVの水素イオンや酸素イオンが加熱され、それが地球の外圏大気とぶつかり、低緯度オーロラを発生させていることが示唆されたという(画像4は、磁気嵐開始直後の低緯度オーロラの発生モデル)。

画像1。陸別町銀河の森天文台で2001年に観測された低緯度オーロラの魚眼レンズで撮影された連続画像

画像2。画像1の低緯度オーロラの輝度変化と地磁気変化

画像3。IMAGEが2001年10月21日に観測した23~37KeVの高エネルギー水素のフラックス量の時間変化

画像4。磁気嵐開始直後の低緯度オーロラの発生モデル

なお、オーロラを引き起こしている高エネルギーイオンは、人工衛星に衝突すると機器の障害を引き起こす可能性があるが、研究グループでは今回の研究について、磁気嵐開始直後に高エネルギー粒子がかなり地球に近いところまで入り込んでくる場合があることを示す重要な結果となるとコメントしている。