ヴイエムウェア株式会社 マーケティング本部 シニアプロダクト マーケティング マネージャ 桂島 航氏

SDN(Software Defined Networking)の概念が、プロ向けのIT系メディアやシステム管理者、エンジニアの間で話題となっている。ネットワークをソフトウェアによって論理的に分割・管理し、リソースを効率良く運用するアーキテクチャーだ。そんな中で、サーバーやデスクトップ仮想化の市場を牽引するヴイエムウェアは、SDNをさらに進化させた「Software Defined Datacenter(SDDC)」のコンセプトを提唱する。ヴイエムウェア株式会社シニアプロダクトマーケティングマネージャの桂島航氏に、同社のビジョンをうかがった。

3~5年先を見据えた強いIT環境を作る

「近い将来、社内のIT環境はパブリッククラウドと比較されるようになる」と断言するヴイエムウェアの桂島航氏。ここでいうパブリッククラウドとは、営業支援や会計支援など、エンタープライズ向けの外部クラウドサービスのこと。現場で業務を担当する社内のエンドユーザーが、「外部クラウドのほうが速くて使いやすいのでは?」「なぜ利便性の低い社内システムを利用しなければならないのか?」といった意識を持ち始めるというのだ。しかし、コンプライアンスや社内ポリシーの観点から、すべての業務インフラを外部クラウドにゆだねるのは難しい。

「IT部門は、来るべき状況に備えて、競争力のあるIT基盤を築いておくべきではないでしょうか。『Software-Defined Datacenter (SDDC)』は、そんなIT担当者にぜひお伝えしたいコンセプトです」と桂島氏は語る。同社が提唱するSDDCは、ソフトウェアによってネットワークを仮想化するという「SDN(Software Defined Networking)」を、一歩進めた考え方だといえる。ネットワークだけでなく、ストレージやセキュリティも統合し、データセンターごと仮想化してしまおうという発想だ。

桂島氏は「仮想化ソフトウェアを提供するなかで、サーバーの仮想化だけでは解決できない問題があることが分かった」と語る。確かにSDDCのコンセプトは、国内外で仮想化の市場をリードしてきたヴイエムウェアらしい考え方だ。

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リーディングカンパニーであり続けられる要因は?

IT分野専門の調査機関・株式会社ミック経済研究所のレポートによれば、国内のサーバー仮想化市場で、ヴイエムウェア製品のシェアは83.6%に上る(「サーバ仮想化&オンプレミス型プライベートクラウドの市場展望2012」より)。さらに、ヴイエムウェア株式会社の調査によると、「日経225」の該当企業の93%の企業がヴイエムウェア製品を使用している。現在のところ、大規模データセンターの仮想化ソフトウェアは、ヴイエムウェアでほぼ独占されているといって良いだろう。

同社がリーディングカンパニーであり続けられる要因としては、仮想化に特化した信頼性の高いソフトウェアを提供してきたことが大きい。「当社の仮想化ソフトウェアはOSに依存しないので、OSのセキュリティアップデートのたびにハイパーバイザーを再起動するようなことがありません。仮想マシンを何台も使うような大規模システムで、たびたびダウンタイムが発生するのは、企業として大きなリスクです。その点、当社のvSphereは、信頼性を高く評価していただいています」(桂島氏)。

最新のvSphere 5.1は、ディスク占有量が144MBと、USBメモリーにも入るほど軽量。リソースを圧迫せず、高速な動作にも定評がある。「透過的ページシェアリングや、メモリ圧縮などの機能を搭載し、パフォーマンスの向上に努めています。第三者が仮想化ソフトウェアを比較したベンチマークでも、高い性能を発揮しています」と桂島氏は胸を張る。特に、仮想マシンを多数設置した高統合率下の環境でもパフォーマンスの劣化が少なく、安定して動作するのが頼もしい。

また、ゲストOSのサポート数が群を抜いて多く、WindowsやLinuxをまとめて統合したシステムが作れるという点も評価される要因の1つとなっている。

次世代のプライベートクラウドが経営を加速する

こうして培ってきた仮想化テクノロジーをベースに、プライベートクラウドを次世代へと進化させるのが、ヴイエムウェアのビジョンだ。2011年度現在、プライベートクラウドソリューション市場で、同社のシェアは92.8%(ミック経済研究所調べ)。vSphere 5.1では、ネットワークを仮想化するVXLANに対応し、既にその歩みを進めている。

環境の変化は大きいが、その中でも、桂島氏はあくまで既存のIPネットワークを生かすことを前提としている。同社のSDDCは、ソフトウェアによって論理的にインフラを分割するのがコンセプトだ。大規模な改修は必要なく、最小のコストで対応できるフレームワークでなければならない。

実現すれば、エンドユーザーは迅速かつ柔軟にプライベートクラウドを運用できるようになり、IT部門の負荷は格段に軽くなる。最少人員で社内ITを統制することも、より戦略的なIT環境の構築に、マンパワーを割くことも可能なわけだ。

「SDDCのコンセプトは、今後10年間の主流になる」と桂島氏は展望する。今回のセミナーでは、企業のIT環境をダイナミックに変革するためのロードマップが示される予定だ。ぜひとも会場に足をお運びいただきたい。