エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ(以下、NTT-AT)と浜松ホトニクスは1月31日、日本電信電話(以下、NTT)が通信分野向けに開発した基礎技術を応用し、医療分野で用いられる波長掃引型OCT(Optical Coherence Tomography : 光干渉断層計)向けの光源として製品化したことを発表した。NTT-ATが製造を行い、浜松ホトニクスが販売を展開していく。

NTT先端技術総合研究所 企画部 担当部長 界義久氏

NTTの研究成果として発表されたのは、電気光学結晶KTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム)を用いた高速波長可変レーザー技術。2010年にCLEO/Laser Focus World Innovation Awardを受賞した技術で、KTN結晶に入射したレーザー光に電圧をかけることで光の方向を制御できるようになるため、従来型の光偏光素子と異なり、機械式ミラーが不要といった特徴がある。

ミラーを動かす(角度を変更する)必要がないことから、求める波長の光を高速に生成できるうえ、ランダムに波長を選択することも可能。信頼性が高いといったメリットもあるという。

KTN光偏光素子の概要

KTN光偏光素子を用いた高速波長可変レーザー技術の概要

販売を開始する光源装置

光源装置内部に組み込まれているレーザー装置

レーザー装置内で利用されているKTN結晶(左)とKTNチップ(右)

NTT-AT KTN事業部 事業部長の藤浦和夫氏

今回NTT-ATでは、この技術を、前眼部/網膜や冠動脈などの断層像を撮影するOCT装置に応用。従来製品比2倍となる200kHzの波長掃引速度を実現しており、撮影時間の半減や、高精細画像の取得が実現できるとしている。

なお、同製品は現在、冠動脈の撮影で使われる1.3μm帯を中心波長とする光源として提供されているが、1年後の提供を目指して、眼底検査OCT向けの1.05μm帯の光源も開発していく予定。

NTT-AT KTN事業部 事業部長の藤浦和夫氏は、通信から医療への応用がなされた背景について、「元々は光通信向けに開発された技術だったが、展示会などに出展し応用可能な分野を探したところ、医療関連企業から抜群に高い反応が得られた」と説明。続けて、「医療業界では現在、光を活用した技術/装置の開発が活発に行われており、そちらでお役に立てるのではないかと考えた」と紹介した。

浜松ホトニクス 固体事業部 固体営業推進部企画グループ 専任部員 渥美利久氏

販売を行う浜松ホトニクスは、PET用PMTやX線CT用SiPD、歯科診断用CCD/COMSなどの画像診断装置を販売する企業。年間売上約1000億円のうち6割が海外と、ワールドワイドで販売活動を展開している。

今回発表された装置は283万円で提供していく予定で、販売目標として3年後に5億円、ワールドワイドの市場シェア30%という数字を掲げている。