国際科学技術財団は30日、半導体の微細化に革新的な進歩をもたらした米国人2人と、深海生物の生態と多様性を明らかにする研究で顕著な業績を挙げた米国人1人に、2013年の日本国際賞を贈ることを明らかにした。
テキサス大学オースチン校のグラント・ウイルソン教授とサウジアラビア・アブドラ国王科学技術大学のジャン・フレシイエ副学長の2人は、化学増幅レジスト高分子材料を開発し、半導体の超微細化と生産工程の高速化に大きな役割を果たした。
ラトガース大学のジョン・グラッスル名誉教授は、硫化水素を酸化する細菌によって支えられている多様な生態系が深海に存在することを明らかにし、国際プロジェクト「海洋生物センサス」(CoMS)を立ち上げる中心となった。
ウイルソン、フレシイエ両氏の成果は、半導体製造技術であるリソグラフィーによる微細化の限界が指摘されている中、1980年代にIBMで実用化され、90年代には多くの企業に特許の使用が認められた。現在、パソコンから携帯電話、家電製品、自動車、医療機器に至る幅広い製品に使われている半導体のほとんど全てが、化学増幅レジストを用いた方法で製造されている。
開発した当時、ウイルソン氏はIBMサンノゼ研究センターに所属していた。オタワ大学教授だったフレシイエ氏が研究休暇を利用し、客員研究員としてウイルソン氏と共同研究開発することで、この成果が生まれた。典型的な産学連携の成功例とされている。
「研究成果だけでなく、どう応用されるかまで情報を伝えることが大事」(ウイルソン氏)、「企業が大学の研究者にオープンにならないといけない。ウイルソン氏は最初に数時間かけて問題を明示してくれた」(フレシイエ氏)など、記者会見で両氏は産学連携が成功した理由を明らかにした。
両氏の成果には、IBMのフェローから永久社員になった伊藤洋氏(2009年死去)も大きな役割を果たしている。ウイルソン氏は「驚くほど生産的で賢い化学者だった」と伊藤氏をたたえた。