新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は1月29日、古河電気工業(古河電工)などで構成させる研究チームが、超電導送電としては世界最高クラスとなる275kV、150万kVAの送電を可能とする高温超電導ケーブルと、電力機器との接続部にあたる気中終端接続部および中間接続部を開発し、中国瀋陽市の瀋陽古河電纜で実証試験を行った結果、30年相当の加速試験による長期課通電を実施し、ケーブルや接続部の健全性の確認に成功したことを発表した。
NEDOは、世界最先端の超電導技術を活用して、コンパクトで大容量の電力供給が期待できるイットリウムに代表されるレアアース系酸化物高温超電導線材(イットリウム系超電導線材)を用いた超電導電力ケーブルおよび超電導変圧器などの電力機器開発に取り組んできた。
今回の課通電試験は、同プロジェクトの一環として実施されたもので、275kV高温超電導ケーブルシステムは、古河電工が開発したイットリウム系超電導線材を用い、直径150mm、送電損失0.8W/m、275kVの設計仕様で作製した高温超電導ケーブルを、中国瀋陽市において全長30mのシステムとして構築した。
2012年10月中旬に同ケーブルの初期性能を現地で確認した後、同ケーブルに200kVの電圧と、3kAの通電を行い、同年12月末に1カ月間の試験を完了。その後、同ケーブルに310kVの電圧を加え、ケーブルが劣化すると発生する部分放電がないことを確認し、ケーブル、気中終端接続部及び中間接続部の健全性が確認されたという。
超電導送電ケーブルの技術開発は、これまで66kVが主流であったが、現在、さらなる高電圧送電ケーブルの需要が海外を中心に高まっており、今回の技術により、日本国内だけでなく、アジア地域などの新しいインフラとして導入が期待されるようになることから、NEDOでは、超電導ケーブルシステムの実用化に向けた取り組みを継続して行っていくとするほか、古河電工でも超電導ケーブルの実用化に向けた取り組みとして、さらに条件を変えた実験や長期間の課通電試験を実施していくことで、実用化に必要となる多数の設計データを詳細に取得していく予定だとしている。