富士通研究所は、ファイル転送や仮想デスクトップなどの様々な通信アプリケーションの性能をソフトウェアだけで改善する新しいデータ転送方式を開発したと発表した。
従来、通信アプリケーションで標準的に用いられている通信プロトコルのTCPでは、無線接続時や回線が混雑しているなどの品質の悪い通信環境での利用において、データ損失(パケットロス)が発生し、データ再送による遅延により転送性能が大幅に低下するという課題があったという。
今回、同社ではストリーム配信に適したプロトコルのUDPをベースに独自に開発した効率的な再送方式を組込み、パケットロス時のデータ再送の遅延を低減する新プロトコルを開発。消失したパケットと送信中でまだ相手先に届いていないパケットを高速に識別し、無駄な再送と遅延の発生を抑止する。
そして、このプロトコルをUDP上にソフトウェアで組み込み、UDPの持つ高速性能を維持すると同時にUDPの欠点であるパケットの消失と順序の逆転を回避し、パケット送達の遅延時間を改善した。
また、この技術とTCP通信が混在する通信環境において、ネットワークの空き帯域をリアルタイムに計測し、他のTCP通信が占める帯域を圧迫することなく最適な通信帯域を確保する制御技術も開発した。
加えて、様々なアプリケーションで標準的に利用されているTCP通信を新プロトコルに自動的に変換する機能を開発。これにより、ファイル転送、仮想デスクトップ、ブラウジングなどの様々な既存のアプリケーションに手を加えることなく、性能を大幅に改善することが可能となるという。
同社によれば、TCPと比較して日米間のファイル転送を30倍以上高速化でき、さらに仮想デスクトップの操作遅延を1/6以下に短縮することが可能となるため、今後普及が見込まれる国際回線や無線回線を使った様々な通信アプリケーションを快適に利用することが期待できるという。