富士通研究所は1月21日、PCのモニタ上に表示されている画面を携帯端末のカメラで撮影するだけでデータそのものを直感的に転送することができる技術を開発したことを発表した。
近年の携帯端末の性能向上に伴い、これまでPC上で作業してきたさまざまな処理を携帯端末上でも行うことが可能となってきた。しかし、PCと携帯端末の間でデータをやり取りしようと思うと、ケーブルやワイヤレス経由で接続し、設定を行って、データを取得といった手間や、クラウドベースでの共有に関しても、業務情報や個人情報などを安全に運用できるかどうか、という点が不安視されている。
今回開発された技術は、これまで同社が開発してきた映像を媒介にしてデータを通信する技術(映像媒介通信技術)を応用したもの。ファイル転送用のサーバアプリをPC上に、携帯端末側にクライアントアプリをインストールすることで、サーバ側が画面に表示されているデータに対し常に目に見えない形でIPアドレスを重畳表示し、それを携帯端末側のカメラで撮影し、解析を行うことで指定されたアドレスにIPネットワーク経由でデータを受け取りに行くというもの。逆に携帯端末側のデータも、PCの画面を撮影することでPC側に送信することも可能だ。
PCの画面にリアルタイムでIPアドレスなどのデータを重畳表示しておき、それをクライアント側で画像処理することで、指定されたアドレスよりファイルをダウンロード/アップロードする形でデータのやり取りを行う |
現在の転送レートは16bpsであり、フルにIPアドレスを入れられないということで、実用化の際にはその転送速度を向上させて、すくなくともIPv4でフルにアドレスを提示できる32ビット以上にはしたいとしている(16bpsであるため、32ビットデータであれば2秒間カメラをかざすことで対応も可能だが、ユーザーの利便性を考えると2秒間もカメラをかざすことは現実的ではないという)。
逆にタブレット側のデータ(左のタブレットで撮影されている人物は、今回の技術説明を行った富士通研 メディア処理研究所 イメージシステム研究部の田中竜太 主任研究員)をPCのモニタ(プロジェクタ)にかざすことで、PC側に転送することが可能(こちらも写真データだけでなく、フォーマットはなんでも良いという) |
現在同社では、主にビジネスでの活用を想定しており、例えば会議でスクリーンに表示されている画像に同技術を活用することで、プレゼン資料を手元のタブレットにダウンロードさせて、自由に閲覧させたり、逆に手元のタブレットのデータなどを、参考資料的に突発的そういった会議の場でプロジェクタに投影しているPC側に渡すといったことが可能になるとしている(画面サイズといては、実験レベルでは百数十インチレベルでも認識できたという)。
対応フォーマットに制限はなく(ただし、携帯端末側でフォーマットが対応しているかといった点は別問題)、受け渡されるデータ容量やその転送速度は、実際に用いられるネットワークの速度に応じて、ということとなる。
なお、同社では2014年度の実用化を目指して、富士通などと商用化に向け、通信速度の向上などを図るほか、具体的な仕様などの詳細を詰めていくとしている。また、同技術はMobile World Congress 2013(MWC 2013)の富士通ブースにて紹介される予定だという。