NECは1月17日、高速無線通信を利用するワイヤレス機器において、機器内部のプリント基板に独自の人工材料を形成することで、アンテナの受信感度を最大で約10倍に向上させる電磁ノイズ抑制技術を開発したと発表した。

開発した電磁ノイズ抑制技術は、金属を周期的に並べることで自然界にない性質を引き出す人工材料メタマテリアルの一種で、特定の周波数の電磁波を遮断する「電磁バンドギャップ(EBG:Electromagnetic Bandgap)構造」と呼ばれるもの。

スパイラル状の金属線からなるオープンスタブ共振器を採用したμEBG構造では、Wi-Fiで用いられる2.4GHz帯の電磁ノイズを遮断する場合、従来のLC共振器を組み込んだEBG構造のユニットセルと比較して約1/10のサイズとなる2.1mm×2.1mmを実現できる。これにより、困難だった高密度なプリント基板の内部への実装が可能となり、電磁ノイズの放射を抑制することが可能となった。

また、電磁ノイズの発生源であるデバイス直下のプリント基板内など、実装スペースが狭く従来のEBG構造では配置が困難だった場所にユニットセルを集中配置できることから、これにより通信を妨害するGHz帯の電磁ノイズをプリント基板の内部で遮断し低減することで、アンテナの受信感度を最大で約10倍向上し、無線機器の通信速度を最大で約2倍向上させることに成功したという。

さらに、通信周波数帯に合わせた複数のオープンスタブ共振器をユニットセルに組み込むことにより、マルチバンドの動作が可能となった。これにより、例えばWi-Fiの2.4/5GHz帯の電磁ノイズを同時に遮断できるなど、利用周波数の異なる多様な無線通信規格に柔軟に対応できる。

なお、NECとNECアクセステクニカでは、同技術を活用した製品を年内に発売する予定とするほか、今後も電磁ノイズ抑制技術の研究開発を進め、無線通信品質を高めたワイヤレス機器の実現を目指していくとしている。

今回開発されたμEBG構造の試作ボード(左)とユニットセルの構造(右)